どこでもビジネスアナリシス (51)

51 ビジネスアナリシスには構造がある

51.1 実行を三つの階層で考える

DSC_0117

ビジネスアナリシスを有効な手法として使いこなすには、その構成構造を理解すると効果的です。 ビジネスアナリシスは多くの基本になる概念や機能や手法があり、それらをどのように組み合わせて適用するかが効果的活用の鍵になるからです。構造といってもその考え方の視点からいろいろな構成が可能ですが、三つの階層で考えるのがわかりやすいと良いと思います。 三つの階層とは、実行の全体戦略と基本計画の立案、各計画業務の機能構成、各機能業務を実行する具体的手法や技術です。これらの三つの階層の構成要素はどのような対象課題に対しても一般的であり利用の共通性を持っています。言い換えればビジネスアナリシスを構成する基礎部品です。ビジネスアナリシスの知識体系と呼ばれるガイドはこれらに相当します。

これらの基礎部品を実際の対象課題の実行レベルにおいて、どのように配置していくかを決め、実行していくことがビジネスアナリシスであり、その部品の選択は、それぞれの課題が置かれている環境や要求される目標によりまちまちです。最も効果的な実行体系を構築することが優れたビジネスアナリシスだと言えます。

51.2 全体戦略と基本計画

ビジネスにおいて何かをしようとするときには、まず自分の立場と周囲の環境を理解して、何をどのように実行しなければならないかを考えることが常に必要なことです。現状の認識、目標の設定、周囲とのコンセンサス、実行手法の選択、推進体制の構築、資源の調達、実行の教育、結果の評価、等々多岐にわたりますが、これら全体をどのように推進していくかの概念を固めることが着手時点での重要な課題になります。この時点では、対象とする問題に対して、概念的な解決の構想を描き、問題点を捉えてその対応戦略を考えていくことが効果的です。このような基本計画としての全体戦略を描くことが構造の第一段階です。大きなプロジェクトにおいてまずフィージビリティースタディーをし、製品開発において概念設計をすることに類似しています。

51.3 実行業務の機能構成

基本計画としての全体戦略ができますと、その各業務の中で何をどうしなければならないかの検討と調整が必要になります。現状認識のために調査や情報の収集をしなければならないかもしれません。集めた情報の分析評価をする必要もあります。自分の組織内で実行できることのほかに外部との交渉や調整が必要な場合もあります。対応組織の構築、人材の強化も必要です。必要な資源を調達しなければならないかもしれません。外部からの支援や外部のサービスを利用することが効果的なこともあります。このような必要機能に対して、最も効果的な機能構成により対応構造を作り上げることが構造構築の第二段階です。この段階にも多くの戦略を埋め込むことが可能であり、その結果はビジネスアナリシスの実行効果を決める大きな要素になります。

51.4 適用手法の選択

構造の最後の段階は実務に適用する具体的な手法や技術の選択です。手法や技術といってもその内容や技術レベルはさまざまで、高度かつ概念的なものから日常の常識的なものまで多種多様です。この選択で大切なのは、概念や技術の新奇性や技術レベルの高低ではなく、適用する当該業務に最も効果的かつ効率的であるかということです。また、利用する人たちの経験や能力によっても異なる選択が必要になることの配慮も必要です。高度な手法は潜在的要因を可視化する可能性がある一方、単純な手法は理解や利用が容易でもあり効率的に利用できることが多いと言えます。実際の選択においては、利用環境を認識することが非常に大切です。