どこでもビジネスアナリシス (53)

53 実行手順を決める

53.1 機能構成と実行手順

ビジネスアナリシス実行の機能構成は三つの段階で考えると理解しやすいことを述べましたが、具体的にどのような順序で実行すればよいかは検討が必要です。実行組織の現状や環境、対象とする問題の特徴、問題解決の緊急性などにより実行手順は異なります。実行組織の問題認識の程度や着手時までの準備状況によっても異なる手順が必要です。また、重要作業の周辺では種々な行動が組み込まれる影響を受けることもあり、必要によっては繰り返し作業が生じる場合や意図的に途中結果をフィードバックして再作業を実施する場合もあります。いずれにしても実行手順は対象課題の特徴、実行処理の状況、実行組織の状態などにより柔軟に設定することが必要であり固定された概念はありません、推進の経過状況により、実行途中での修正も可能です。

53.2 大きな流れは変わらない

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実行手順は柔軟であると言っても、通常の課題対応では基本的な手順があって、どのような課題に対しても殆ど適用できます。その手順は、大きくは、基本状況の確認と分析、問題解決の戦略と計画、実行戦略と推進、の3段階で考えるとよいでしょう。 もう少し詳しく考えるならば、基礎状況の確認と分析は、着手しようとしている課題の状況を確認し、実行計画の基礎や判断の根拠にすることを網羅しておくことであって、具体的には、問題の認識、現状の確認、課題発生要因の分析、解決目標の設定などです。 問題解決の戦略と計画は、解決目標を達成するための最適な方法の選定であり、解決戦略、手法や技術の選択、想定障害の分析と対応、などを含みます。実行戦略と推進では、実務行動の計画、実践、結果の確認などであって、さらに具体的には、実行体制の構築、必要なリソースの準備と配分、実行マネジメントの確立、推進状況の評価指標の設定と監視、必要な軌道修正、実行効果の確認などが含まれます。このような全体的な流れはどのようなプロジェクトにおいても基本的に類似ですが、その中で対象課題の特徴によって、具体的な実行内容をどう組み変えていくかが重要なところでありビジネスアナリシスの価値を示すところです。このような実行手順とは離れて、トップマネジメントの実行意識や、実行組織全体の意識と行動能力の向上をはかることは基本的な要素として欠かせません。

53.3 何から始めるか

ビジネスアナリシスを実行する業務機能は一般的な実行機能の中から適宜選択することになりますが、その手順の選択は結果に至る効率を大きく左右します。特に大切なのは何から始めるかという着手時の計画です。課題が認識された経緯にもよりその背景はまちまちですが、なぜこのプロジェクトを実行しなければならないのかということを十分に理解して、その課題解決に必要な情報収集や情報認識ができているかという意識が必要です。とくに、自分とその周りの状況判断と認識が欠かせません。先入観のない理解と判断からスタートしなければなりません。何が起こっているのかわからない中からのスタートもあります。緊急処理を必要とする課題もあります。ただ、現状認識を間違えると、間違った方向へ回答を導く恐れがあることを理解することが必要です。

53.4 途中の確認と評価を忘れずに

計画を実行していると、工程や推進状況に関心が集中されて、現状の確認や評価を忘れがちになります。気付いた時には大きく軌道を外れていることがあります。計画通り実行していても結果が異なる方向へ向いていることもあります。実行過程においては、常に現状を監視し、確認し、評価して、必要なときには早期に軌道修正をすることは重要な判断です。その時点での関連先への影響の評価と実行計画の調整は重要です。