どこでもビジネスアナリシス (65)

65 何かを感じる能力を育てる

65.1 何かおかしい

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日常の仕事に慣れてくると、担当している業務に何かおかしいと感じることがあります。このような経験は、業務の習熟度が増すにしたがって容易に気づくことができます。当初は定められた、あるいは教えられた基準に従って観測をしながら不自然なところを見つけることから始まりますが、だんだんと直感的に不自然を感じるようになり、さらに関連する範囲が2次元的、3次元的に広がっていっても総合的に判断できるようになります。このような直感的な能力は、検査などで一般的ですが、経営指標などにおいても相関的な関係が不自然である判断にもいえることです。このような感じる能力は対象が定性的であっても定量的であっても同様に可能であって、経験的な論理的矛盾を感じ取る能力が育つのでしょう。技術の発達によりこのような判定は情報処理や機械的判断に頼るところが増えていますが、最終的には人間の判断に依存するところは今後も少なくありません。 

65.2 そんなはずはない・・・・・どこかに原因がある

このような能力の多くは経験によって成長します。ただぼんやりと同じことを繰り返すのではなく、意識をもって対象を見て、発生する現象の因果関係を常に考えることです。何か異常を見つけた時に、それに関係する上流のプロセスを即座に特定し、その中から原因を想定することが行われます。自分の知識を活性化して個々の原因を考えればそんなはずはないという中に何となく怪しい要素が見つかるはずです。どこかに必ず原因があるはずです。ただ、原因は多岐に広がりその末端まで到達して真の原因を特定するには多くの判断を必要とします。起こった現象をよく観察し、その原因の可能性の方向を絞り込んでいくことから始まります。この作業も経験に基づくところが多いのですが、先入観をすてた論理的な追究をすることが基本です。

65.3 何がおかしいのか

「何かおかしい」から「何がおかしい」のかに絞り込んでいくことが解決のプロセスです。物理的現象の場合には、おかしいもの自体を比較的容易に見ることができますが、経営上の問題ではおかしい現象の背後にある「何がおかしい」のかが見えないことが良くあります。原因はひとつではなく複合的であるかもしれません。何がおかしいのかが判明すれば、問題解決のスタートラインに立てます。おかしい要素を構成する要因を分析します。入手できる情報やデータを分解して、おかしいことが起こると思われる要因の関係図を作って眺めてみます。時間的変化の情報や数値があれば強力な分析材料になります。それでも、何がおかしいのかを特定できないこともあります。その場合にはもう一段先まで要因分析を進めてみる必要があります。プラス要素とマイナス要素が打ち消し合っている場合、気が付かない現象が潜伏していることなどがあります。

65.4 その原因は何か

「何がおかしい」のかがわかれば、その原因を追究するために「なぜそうなるのか」という疑問のサイクルを繰り返して解いてゆきます。ここでも「おかしい」現象が発生する原因となる関連事象を順次問い詰めてゆきます。原因はひとつではなく複数の要素が複雑に関係していることがあります。原因追及で難しいことは、常には起こらない事象があることです。関連する事象の発生状況により原因となる事象が現れたり現れなかったりします。また、論理的に正しくても、構成する部分要素に潜在的不具合がある場合には論理的に詰めていっても原因を突き止めることができません。そのような場合には、視点を変えて分析評価することによってそこにしか原因はないという詰め方をしてその構成要素を分解するしかありません。そこでも経験による感じる能力が役立ちます。