69 誰が関与しているか
69.1 取り巻く環境を見渡す
ビジネスは取り巻く環境の中に存在し、環境との相互作用で結果が左右されます。環境といっても多種多様で、政治、経済、国際関係や市場の状況、身近には競争相手の動向など、もっとミクロには、同じ組織の中の他の部門との関係などもあります。ビジネス上の変革を試みようとするような多くの関係先との相互作用がどのように変わるであろうかということを良く検討しなければなりません。実行してみたらとんでもないところに利害関係者がいたということも良くあることです。計画の策定に当たってはまず実行しようとすることに対して、影響を受けることと影響を与えることを描いて取り巻く環境を見渡すことが必要です。特別な課題に対しての解決策や対抗策の実行に対しては、その直接の対象が最も重要であることは容易にわかりますが、その関連先が芋づる式に次々と関係してくることもあり、それらに対する影響の判断は欠かせません。取り巻く環境は意外なところまで広がっていることに注意してその境界を見極めることが必要です。
69.2 個人的な関係と組織的な関係
誰が関与しているかに関しては、「誰」が個人的な場合と組織的な場合とがあります。実行策の決定に特定の個人が深くかかわっている場合には、その人の思想や環境に大きく左右されますので、個人の特質や能力を理解することが大切ですが、意見が分かれた時に議論により同意に至ることも可能です。相手が組織の場合には、組織内の意思決定や組織内の特定個人の意見の調整などに思わぬ労力を要することがあります。個人であっても、組織であっても、重要な関係者を見落とすことのないように注意しなければなりません。人は参画意識を大切にしますので、決定のプロセスに参画していたかどうかによって、妥協点が左右されることが少なくありません。また、組織との会話においては、会話の相手が本当にその組織の意見を代表しているかの判断も重要です。会話の相手と現場とが乖離していて、採用した戦略が現場の要求を全く反映していなかったということもあります。対話の相手の実力や能力、責任力を見ぬくことは大変重要な課題です。
69.3 プラスの影響、マイナスの影響
ビジネスの方策を議論する場合に、同じ方向の議論を纏める場合と、多くの反対意見を纏めていく場合とがあります。同じ方向の意見を纏める場合には積極的に概念の構築が進み容易に結論に達することが多いのですが、参加者相互に疑問や批判が少なく、重要な注意点を見落とす危険性があると言えます。他方、異なる意見を纏めていくケースでは多くの反論が出されて意見を集約するのに苦労しますが、議論のプロセスにおいて注意点や問題点に関する多くの議論がなされますので、ある程度のリスク回避の検討がされているとも言えます。ただ、妥協点の選択によっては、無理な方策が組み込まれる可能性もあります。このようにいずれのケースにおいてもプラスの影響とマイナスの影響があることを認識して、関与する人や組織の選定が必要です。
69.4 習慣やルールも環境として考える・・・その裏には人や組織がある
ビジネス改革の実行に関与するのは人や組織ですが、そのほかに実行環境に影響するものとして組織や業界の習慣、種々の規則やルールがあります。実行しようとすることに対して種々の制約を与えます。障害となるこれらの規則などをどうやって回避していくかは人や組織の意見と同じ働きがあります。ただ、これらの習慣や規則などは、過去に人が決めたことですから、不適切なものがあれば積極的に変えていく努力も必要です。規則は変えられないという認識は捨てるべきです。時間と共に必要な変化をしなければなりません。