70 環境を知る-ビジネスは環境の中にある
70.1 事象は環境の中で起こる
ビジネスは常にそれを取り巻く環境の中で活動しています。環境といってもさまざまであって、広くは政治や経済、国際関係であったり、在住する地域の社会的状況であったり、関係する市場や顧客の状態であったり、競合する企業の状態や連携するパートナーとの関係であったり、身近では同じ組織内の他部門との関係であったりします。自分とそれらの個々の環境との関係は、ビジネスにとってプラスであったりマイナスであったり、あるいは何らの影響がなかったりしますが、どのような状況関係にあるかにより、環境への対応方法は大きく異なります。一般にはビジネスにとってネガティブな関係である場合には緊張をもってその推移を監視し、必要な対策を講じなければなりませんが、ポジティブな関係の時にはあまり気にしないことが多いのですが、本来はチャンスととらえて積極的にさらにポジティブになるように行動を起こさなければなりません。また、注意しなければならないのは、直接的には無関係のように見えても、何らかの間接的な影響を及ぼす環境を見落としてはならないことです。また、同じ外部の環境変化においても、ビジネスへの影響に対してプラスになったりマイナスになったりすることがありますので、個別の事項に対する環境の影響を詳細に捉えることが必要です。
70.2 環境が異なれば現象も異なる
何かの行動を起こしても組織を取り巻く環境によってその結果生じる結果はさまざまであって、全く同じ結果が生まれることはまずありません。同じく、取り巻く環境がビジネスに与える影響は多様であり、同じ環境がプラスに影響する対象があれば、同時にマイナスに影響する対象もあります。環境は総合的なものであり、種々な要素の組合せからできているので、単一の環境というものはないと言えます。ビジネスでは常に提供者と受領者とがあり、その両者の利害は相反することが一般的です。単純な例では、価格が高ければ販売者の収入は増えますが、購入者の手元資金の残額が減少します。総てこのようなバランスの上でビジネスが成り立っています。
70.3 環境は時間とともに変化する
ビジネスを取り囲む環境は常に変化しています。環境は多くの要素の組合せで構成されている上に各要素は個別に変化していますので全く同じ環境というものはめったに起こりません。ビジネス上の意思決定をする場合、いつやるかという課題は重要ですが、流動的な多くの環境要素の総ての動向が最適になる時点を捉えることはまず不可能ですから、目的とする対象に最も効果的な要素の環境変化の最適点を捉えて実行していると言えます。いくつかの要素の組合せで最適な時点を狙うこともあります。例えば、資金の調達が必要な設備投資をする場合には、資金調達が有利でありかつ設備価格が低い時点を選択するなどです。複数の主要な選択要素がある場合には最も大きな感度を持つ要素の最適点を捉えるのが普通です。ただ、市場環境の必要性から、コストを犠牲にして緊急投資をすることもありますが、これはビジネス最適化の意思決定に環境分析の要素に市場環境の変化を重要視した結果です。
70.4 全く同じ環境を再現することは難しい
過去の経験や外部組織の実例から、特定な環境の選択を期待しても、全く同じ環境を実現することは難しいと考えるべきです。自分がコントロールできる環境を作り出すことはある程度可能であっても、外部環境は勝手に動きます。理想とする環境を狙うならば、対象とする最も重要な環境要素を絞り、他の優先度を下げた環境は何らかの方法で補足することが必要です。理想的な状況を待っても時間のロスに終わることを認識すべきです。