71 変化は変化を生む
71.1 環境に順応するか対抗するか
ビジネス環境は常に変化しています。変化に順応できるマネジメントが評価されることになります。変化の形態や規模によりその対応策はまちまちですが、ビジネス目標に対して環境の変化がどのように影響を受けるかの判断が求められます。もう一つ大切なのは起こった変化が今後どのように発展していくかの判断です。変化にはパターンがあり、段差を生じて定着する段階的変化、一方的な方向への連続的な変化、反動で戻ってくる周期的変化などですが、どのパターンになるかはおおよその想定ができますので変化のパターンを読むことは対応策の策定に役立ちます。その規模や変化の幅を想定することが重要になります。変化に順応して流動的な対応をするか、変化に影響をされない対抗策を講じるか、あくまでも変化に対抗するかはその可能性と組織の能力、コストを含む必要な資源力などのバランスによって判断することになります。
71.2 自分が変われば環境も変わる
自分が変わるということは関係する他の組織においてはその環境が変化することになります。相手が変われば自分も変わらなければなりません。どちらが先に仕掛けるかにより対応策には大きな影響が生まれます。ビジネスにおける変化は多くの場合競争ですから、勝つことに対する信念と自信があるかどうかが対応策を実行する上での大きな課題です。自分が変わることによって、それに影響される環境が大きく変わることもあります。思いがけない副作用-それがプラスであるかマイナスであるかはわかりません-が発生することもあります。自分が変われば環境がどのように変わるかを想定することは非常に大切です。
71.3 意図的に変える力を持つ-価値を生む変化
環境が変わることへの対応ができることが大切ですが、環境を自分の有利な方向へ変えることができればさらに効果的です。自分が変われば周囲がどのように変わるかを想定して行動することができれば効果的です。変わり方にはいくつかのパターンがあります。これまでに多く行われたのは能力と力で押し通す変わり方であり、集中的に得意分野を強化し競争相手に差をつけることですが、集中的な投資や人材が必要であり、そのための資源基盤や能力がなければなりません。昨今では、組織の統合による競争力強化が盛んであり、強者どうしの統合、強者を中心とした結集など意図的に業界の構図を変える変化が行われています。一方では、競争を回避して、特徴的な分野に特化するビジネスや、事業分野を売却するなどの方法によって自分には価値を残す選択をすることも日常的に行われます。このような組織構造の変化は規模や市場競争力だけではなく、優秀な管理能力、新技術の獲得などの目的で行われることも少なくありません。
71.4 変化の先を読む-次は何がどう変わるか
変化への対応はまずは短期的な能力や機能強化を目的にすることが多いのですが、本来はその先の変化がどうなるかの冷静な判断を伴う対応が必要です。もっとも避けるべきことは競争の悪循環で最後には疲弊してしまうことです。規模や力の拡大による対応策は拮抗した組織間の競争ではその危険が多いと言えます。対象となる市場規模にもよりますが、特徴を持った分野に互いにすみ分けることなどにより、付加価値の高いビジネス分野を形成することが有効といえます。昨今では市場ニーズは多様化していますので、一つの分野でも特徴あるサービスや製品を提供することは可能であり、いかにして市場の心を捉えるかが鍵になるでしょう。次に何がどう変わるかを読むことは高度な分析と判断が必要であり、適切な実行力を持つことが決め手になります。