どこでもビジネスアナリシス (72)

72 価値はどこにあるのか

72.1 誰にとっての価値なのか

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ビジネスアナリシスでは価値を生むための施策が議論されますが、価値とは誰にとっての価値なのでしょうか。実行に関係する組織は多様であって、各組織の価値を一致させることは非常に難しい場合が多いと言えます。また、実行の過程においてもその利害関係は複雑です。すなわち、ある組織の価値は他の組織の損失や負荷になるような現象が常に起こるということです。このような環境の中で目標とする価値を決めなければなりませんが、目標の設定は一段と高い視点から定めた総合的な価値を設定することが必要です。構成組織間の利害関係の調整あるいは補填をしながら全体としての価値を達成するマネジメントが必要です。

場合によっては、自分たちが価値を達成することによって、社会に対する負の影響を配慮しなければならないこともあります。 市場競争のように、相手に勝つことが目標であり価値である場合にはあらゆる手段を行使することにあまり躊躇はありませんが、社会性の強い課題に対しては困る人への配慮が必要な場合があり、他の方策を講じたり、困る人を何らかの方法で救済したりすることも価値達成の手段に配慮しなければなりません。このように誰にとっての価値なのかということは着手時に認識することが大切です。

72.2 価値の目標を明確にする

ビジネスアナリシスには着手時の多くの認識が必要ですが、行動を明確にするためには価値の評価目標を明確にすることが必須です。組織内外で発生するプラス・マイナスの総ての行動を網羅して最終的にどうなれば目標の達成とするのかという定義と、可能な限りその数値的表現が必要です。価値を定量的に評価する場合には、価値の変化を比較できる基準としての現在の状態を測定しておくことが必要です。定性的な価値の創造においても、できる限り関連する事象の現状の定量化をしておくことは可能なはずです。例えば信頼性というような定性的な表現も、不良率や故障率、あるいはリピート顧客率などの関連指標を定量化することは容易なはずです。さらに段階的に価値を達成していくことも可能であり、最終目標を構成する要素それぞれの目標を設定して、最終的目標に到達することができます。このような定量化により、途中経過を可視化できる利点もあります。

72.3 直接的価値、間接的価値

最終的な価値を得るためには直接目標に向かって突き進むことだけでなく、周りの問題を順次解決することによって局所的価値を積み上げながら達成できることが多いと言えます。問題解決のための要素は通常一つではなく多様な要素が組み合わさっているからです。一つの課題が解決されることによって、連鎖的に他の課題も解決されていくということもあります。その大きな要素の一つは人の意識と判断力、行動の積極性であり、物理的投資や仕掛けを変えなくても、意識の変化のみでビジネスを大きく変革できることは良くあります。組織内の人間関係の変化も同様です。このような間接的な価値変化が大きな総合的価値効果を生むことは認識すべきです。

72.4 価値は時間とともに変化する

ビジネスにおける価値の形態はさまざまであり、組織の運営には多様な関係者や関連する傘下の組織があり、それらの関係者たちがどのように価値を享受するかの判断も必要です。価値の評価は設定値だけではなくそれに付随する多様な条件や構成要素への影響を理解しなければなりません。これらの環境や条件は常に変化していますので、それに伴う価値は時間と共にいつも変化しています。価値は一度達成すれば長期的に継続するものではなく、その変化を予測して次の価値に向けた新たな目標を追求していかなければなりません。