83 異なる文化から学ぶ
83.1 人間は自分の環境にいるのが心地よい
ビジネスに限らず、ものごとがうまく運んでいる間はそのままで居続けることは心地よいものです。但し、自分が快楽を享受している間に競争相手は必死になって追いつき、追い越そうと努力しています。また、自分だけでなく、自分を取り巻く仲間達が良い状態にある時は安心感を持って気持ちよく過ごしていることが多く、そのような環境では自分達は正しい道を進んでいて、他のことを考えなくても良いという錯覚さえ覚えるものです。新しいことを考えようとしても、仲間たちが皆同じ環境にある時は満足しあい、他のことを考える必要性すら感じません。このような環境の中にいますと、刺激を受けることも少なく、周りからいろんな危機が迫っていることに気が付きません。安全な環境にいるときは安全でない環境の入口にいるということに気付かないのです。
83.2 異なる文化は新しい発見の宝庫
異なる分野の人達は、自分達と全く異なる経験を積み重ね、現在もいろいろな異なることを考えているかも知れません。同じ問題の解決を考えていても、そのアプローチは全く異なることがあります。環境が異なるとともに考えるプロセスが異なる、場合によっては常識が異なるかもしれません。異なるワザを持っているかもしれません。なぜそのような判断をするのだろうかという疑問が生まれます。そこには彼らの常識に基づく判断があり、それらを正当化する環境や能力があるはずです。そのような場面で、自分が抱えている問題に当てはめてみるとどうなるだろうかと考えてみることは有意義です。ただ真似をしてもダメですが、異なる手法の選択を可能としている背景や能力を調べてみると思いがけない方法が隠されていることがあります。
83.3 異なる視点からみると異なるものが見えてくる
ビジネスの判断において、自分は正しいのだと考えたくなるものです。でも、何かがうまくいかない場合には何か課題があるはずです。極端な場合には不可能なことにチャレンジしているかもしれません。同じものでも違う視点から見ると違うものが見えきます。そこには課題の解決につながる違う道があるかもしれません。自分の判断を疑ってみて、異なる角度から見てみることが有効です。現在の判断を否定してみることは一案です。今の方法がだめならばどうすればよいかを考えます。あるいは次善の策は何かを考えることも有効です。全く逆の方法を考えてみます。山に登るのにいろんなルートがあり、それぞれ特徴があるのと同じです。技術と体力、あるいは所要時間によっていろいろなアプローチがあります。天候の変化にどう対応するかの課題もあります。
83.4 敢えて誤解する
議論からいろいろなヒントを得ることができます。相手の発言を正しく理解することは基本ですが、敢えて誤解することによって新しいアイデアを生むことが良くあります。なるほどという意見にはその周りにいろいろなバリエーションがあります。自分が今まで気づかなかった方法やプロセスに遭遇すると、さらにいろいろな新しいアイデアが浮かんできます。自分の意見を主張することが目的の議論も多いのですが、それだけでなく、相手の意見から何かを見つけ出す議論をすることは有効です。自分の意見の補強や修正をしてさらに強固な論理にすることも可能です。そのためには自分自身が柔軟でなければなりません。自分の意見の周辺にもいろいろな意見があって、一つの意見に固執することなく柔軟であってよいことがわかります。議論には結果としての妥協点が必要です。妥協のための妥協点ではなく論理的に整合性のある妥協点を見つけることは大切であり、相手の意見の周辺と、自分の意見の周辺との融合をはかって結論を得ることができれば成功です。