どこでもビジネスアナリシス (99)

99錯覚を感知する

99.1 先入観の誤り

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ビジネスに限らず誰もが経験を頼りにいろいろなことを理解し、判断しています。いつも同様のパターンで実行しているので判断の方法には誤りはないだろうと思っているのですが、意外と間違った記憶に頼っていることが多いのです。二つのケースがあります。第一は起こっている現状、あるいは課題の詳細を正しく認識しないで、自分の経験にあるどれかのパターンに類似だと思い込む誤りです。第二は成功体験や失敗体験そのものの記憶の誤りです。これらは記憶や理解における錯覚であって、自分の中に刷り込まれたストーリーのパターンを誤ったまま記憶してしまったか、時間の経過とともに記憶が置き換わっていってそれが常識となって参照されているのです。自分が強い印象を持った事象を明確に記憶しているために、その周辺の詳細が見えなくなってしまっていることがあります。そのパターンはこうなのだと理解してしまういわゆる先入観であって、そのままその課題へ対応してしまうととんでもない方向へ行ってしまう恐れがあります。現在の正しい状況と情報を理解することがビジネスアナリシスの原点であり、いちど頭の中を白紙に戻して理解することから始めなければなりません。

99.2 見えることと実際とには差がある

目に見えることと実際とは必ずしも一致しないことはよく体験します。特に視覚と実際とでは異なることが多く錯視として多くの事例があります。例えば、山に沈もうとする太陽はとても大きく見えますが、天空にある時と実際の大きさは変わりません。地上に立って一直線の先を見るとき、手前の10メートルよりその先の10メートルの方がずっと短く見えます。見る角度の相違に左右されて大きさが異なって見えるのです。ビジネスにおいても類似のことが頻繁に起こっています。期待をもって見るとその方向に大きく見えることがあります。「まだ大丈夫」だと感じたときには「もう危ない」と考えなければなりません。現場へ行って数値で正しく評価し認識しなければなりません。ビジネスにおける錯覚の多くは心理的なものが多いと言えます。できないことをできると感じたり、自分たちの能力を過大評価したりすることもその一つです。逆に競争相手を過大評価して対抗をあきらめることもあります。いずれの場合にも可能な限り数値的にとらえて冷静に比較して判断することが必要です。 

99.3 知っていても間違える

再び錯視の話になりますが、視覚にはいろいろな錯覚があり、同じ色が周囲の環境で異なる色に見えたり、静止している画像が動いて見えたり、同じ長さのものが異なる長さに見えたり、一部が見えなくなったりします。これらは、知っていても間違える錯視の現象です。興味があるのはこれらの現象にはパターンがあって、類似の画像で同じ現象が再現されることです。(興味のある人はウェブ上で「錯視」を検索してみてください。。)

ビジネスの世界で類似のことをしていないか反省してみることは重要です。だめだとわかっていることをやってしまっていることがあるはずです。だめなことのパターンを事前に習得することはビジネス知識の一つだと思います。知っていても間違えるのですから、近寄らないことが正解かもしれません。このような現象をプラスに活用するならば、良い結果に導くことができるかもしれません。競争相手を混乱させることができるかもしれません。 

99.4 事実であることを確認する

このような錯覚の問題は極めて心理的な現象ですが、錯視のような現象でも、視点を変えたり、補助線を引いたり、部分を取り出したりすると、正しい図形や色をとらえることができます。いずれの場合にもあやしい時には疑うことと事実は何かを確認することがまず必要であって、さらなる深みに入り込まないための原則です。