ビジネスアジリティ・マニフェストの解説 2
日本語版を参照ください。 → ビジネスアジリティ・マニフェスト
Ⅲ. ビジネス価値の創出
1. ビジネス価値は,ソフトウェアの開発や購入を含む,投資するすべてのリソース(金銭,時間など)を上回るリターンによって正当化されなければならない。
当然のことを言っているのですが、投資をソフトウェアの開発や購入だけを対象としているケースが多いのではないでしょうか。さらに、時間をしっかり管理する必要があります。ロジャー・バールトン氏の講演では、ブレークイーブンタイムを管理するべきと強調されていたことを思い出します。
(図のクリックで拡大)
上図のValueを大きくするにはどうしたらよいのでしょうか。従来の安定したビジネスの場合は、市場投入後にコスト削減を目指して改善活動をしていればよかったのかもしれません。最近の変化の激しいビジネス環境では、そのような悠長なことを言っていられません。後ろの製品寿命がどんどん短くなっています。必然Time to Mkt(製品の市場へ投入するまでの時間)をより短くしてより早く市場に商品を投入し、かつBreak even Time(投資を回収するまでの時間)も早くしなくてはいけないのです。このBreakt even Timeが最近特に重要になってきました。
2. ビジネス価値は拡張されたビジネス・ソリューションや,変化するビジネス・エコシステムに適応するための変革から生じるのであって,ソフトウェア機能だけから生じるのではない。
当然のことを言っていますが、拡張されたビジネスソリューションには、ソフトウェア機能のみならず、対面での顧客の印象、顧客の感情も含まれます。それらがビジネス・エコシステム(サプライヤーや規制など)の変化に適応できるようになっていなければいけません。
3. ビジネス知識の不足や整合性の不足のために起こる,本来回避可能な廃棄とやり直しは純粋な無駄である。
最近のソフトウェア開発のやり方を批判しているようです。アジャイル開発では失敗を良しとして、リスクの高いものを最初に開発し、だめならさっさと廃棄してしまおうという傾向があります。考え方自体は悪くはないのですが、ビジネス知識(ビジネスルール)を先に明確にしておきさえすれば、回避できるような失敗とやり直しが目立つのかもしれません。ビジネス知識(特にルール)を知らない、または整合させないままソフト開発しても成功するはずありませんね。
4. バリューチェーン全体でない,サイロ内に最適化された価値の創出は,カスタマー・エクスペリエンスと顧客が受け取る価値を部分的に最適化してしまうだけである。
良いことを言っていますね。どんなに良いプロダクトでも、カスタマー・エクスペリエンス(例:企画、宣伝、商品説明、デリバリ、アフターサービスなど)のバリューチェーン全体が充実していないと、顧客が受け取る価値は半減してしまいます。ひいては顧客満足につながらなくなり、リピーターにはなりませんね。
バリューチェーンの意味合いが昔と変わってきているのにお気づきでしょうか。
入荷 → 製造 → 出荷物流→販売→サービス、という直線的なバリューチェーンから。
興味/関心
↓
比較・検討
↓
見積もり
↓
発注
↓
使用
カスタマージャーニーマップを交えて、2次元のバリューチェーンに変貌しているのです。
どんなにコストパフォーマンスの良い商品であっても、興味・関心を持ってもらえなければ売れません。一旦購入してもらったとしても、使用時の満足度が低ければ、決して2度目は購入しようと思わないでしょう。ですから2次元マップとして、全体最適にならなければいけません。
5. 価値創造の立案とマネジメントに必要なのは,バリューチェーン全体のデザイン,変更,管理,運用,分析に使用できるバリューチェーン・モデルである。
具体的にはカスタマージャーニー・マップを活用することも一つの方法です。