アジャイル・ビジネスアナリシス(3)

三つのホライゾン

3つのホライゾンの概要です。

  • 戦略ホライゾンは、組織内で行われているすべての作業のスコープで、組織全体に影響を与える意思決定に関することを対象として、3ヵ月~数年の期間で行います。
  • イニシアチブ・ホライゾンは、単一の最終成果物(プロダクト)を生産するために必要な作業スコープで、特定のゴール、イニシアチブ、チームに影響を与える意思決定に関することを対象として、単一チームまたは複数チームの意思決定者をサポートし、今後1~3か月の期間で行います。
  • デリバリー・ホライゾンは、作業が発生する場でプロダクトの個々の部分を構築するスコープで、ソリューションのデリバリーについて行われる意思決定を対象として、1~4週間から6~8週間の期間で行います。

次の図は3つのホライゾンの関係の概要を示しています。

BABOK_アジャイル拡張版V2_Slide3_2020年11月19日

 

[図のクリックで拡大表示]

それでは3つのホライゾンの具体的な内容を解説します。

戦略ホライゾン

戦略ホライズンにおけるビジネスアナリシスの目的は、「組織のビジネス・ゴール」に関する意思決定を伝えることです。

次のような理由でビジネス・ゴールは変化します(むしろ積極的に変えるのです)。

  • 消費者の嗜好が変化するから
  • 競合他社が破壊的な技術を生み出すから
  • 規制が変更されるから、など

ですから、アジャイル・ビジネスアナリシスはビジネス・ゴールの優先順位を、継続的に再アセスメントし、新たな機会を評価します。そしてアジャイル・ビジネスアナリシスによって、組織は迅速かつ効果的に組織のビジネス・ゴールを適応させ、組織の利用可能なリソースを迅速に再展開することができます(複数のイニシアチブで最適化するのです)。これはまさにコロナ禍における日本(のみならずグローバル)の状況を考えてみると極めて重要なことです。

戦略ホライゾンでのBA作業の要素(抜粋)です。

変化を観察します

次の分野の変化をしっかり観察することが重要です。それにはイニシアチブ・ホライゾンデリバリー・ホライゾンまでにおける変化を理解することが必要です。

  • 顧客の期待の変化:顧客の調査と分析、新規顧客の調査も含む。
  • 外部環境の変化:経済および社会的状況の変化(例:コロナ禍)や新テクノロジーの台頭(AIやIoTなど)、そして競合会社の動向など。
  • 組織内の変化:リソース配分を常に変える必要があります。リモートワークの導入。
  • 現場から学ぶ:イニシアチブとデリバリー・ホライゾンからの情報を重要視します。
  • 機会と脅威を分析し組織が次のことができるよう支援します。
    -新たなイニシアチブの開始
    -現行イニシアチブのリソース配分、スコープ、などの変更
    -成功の可能性の低いイニシアチブの中止

フィードバックと学習

新しいイニシアチブを始めるかどうかの意思決定にちょうどよい分量の情報を提供します。そして次の問いに回答できるようにします。

  • 満足させるべきニーズはあるか?満足させる価値があるか?
  • そのニーズは組織の戦略目標と整合しているか?
  • そのニーズを満たすことに価値はあるのか?
  • など

そしてアジャイル・ビジネスアナリシスの原則を適用します

 全体を見る:

組織が存在する環境、現状の能力、強み、組織の課題を明確にします。

顧客として考える:

組織がゴールを設定すること、組織横断での仕事の整合を採ることを助けます。
顧客への焦点がないと、次のような問題が発生してしまう。

  • イニシアチブ・ホライゾンは意味のない個々の顧客経験を創り出してしまう、
  • 一貫性のない、部分最適の顧客経験を創り出すかもしれない

価値あるものは何かを決めるために分析する: 意思決定者が組織ゴールを追求する際にリソースを適切配分できるようにし、組織全体の作業が、確実に最大限の価値を生み出すようにします。

例を使って真実を得る:

リアルタイムで発生する事実と事例に基づき、急速に変化する不確実な環境においてデータに基づく意思決定を可能にします。

実行可能なものは何かを理解する:

新しい情報の重要性を継続的に解釈する。

コラボレーションと継続的改善を促進する:

組織が顧客と迅速に対応できる効果的なチャネルを構築できるようにします

無駄を省く:

次のような場合に無駄が発生しますので、そうならないようにします。

• イニシアチブが、お互いに整合しない成果を提供する場合、

• 価値を提供しないイニシアチブに引き続き割り当てられる場合。

 

ここでBABOKガイドV3の知識エリア「戦略アナリシス」の概要をご紹介します。

BABOK_アジャイル拡張版V2_Slide4_2020年11月19日

 

BABOKガイドV3の知識エリア「戦略アナリシス」は次の4つのタスクがあります。

  • -現状を分析する
  • -将来状態を定義する
  • -リスクをアセスメントする
  • -チェンジ戦略を策定する

この4つのタスクは同時に実行されることが多く、かつ「現状(Current States)」は常に変化している可能性が強いことを示しています。そして「戦略アナリシス」はイニシアチブの初頭に一度行えばそれでよいというわけではなく、コンテキストの変化に応じて継続的に何度も行うべきことを言っています。まさにこのコロナ禍の現状を言い当てているのではないでしょうか。このBABOKガイドV3はまるで現在のコロナ禍で日本・グローバルな環境において劇的な変化が起きている状況をまるで見据えているかの如く記述されていることに注目してください。そして最新のアジャイル拡張版の「戦略ホライゾン」の内容はBABOKガイドの知識エリア「戦略アナリシス」を簡略化したものにアジャイル・マインドセットを組合わせたもののようです。

BABOKガイドV3のタスクはもとからアジャイル環境を考慮して作成されているようです。

次は「イニシアチブ・ホライゾン」です。