ビジネスプロセスとBA方法論(2)

ビジネスプロセスとBA方法論(2)

ビジネスアナリシス方法論に限りませんが、業務改革に最も重要なことのひとつとして、「業務プロセスの標準化」があります。実は日本の多くの組織において業務プロセススが標準化(もしくは業務が標準化)されていないことが大きな弱点になっていると思います。

従来から日本の組織は現場の創意工夫を最大の武器として1970年代80年代にジャパン・アズ・ナンバーワンとして特にモノづくりの分野で世界を席巻したものです。TQCもしくはTQMを最大限に活用して現場の業務(のプロセス)を継続的に改善し続けていって大きな成果をもたらせました。そしてそれが大きな成功体験として、今の経営層に深くしみ込んでいて今も続いているようです。

しかしながら、考えてみると複数の部署(例えば東京本社と大阪支社)で同じ仕事をしているのにやり方(プロセス)が異なりそれぞれが創意工夫して業務を改善している状態が多いようです、言い方を変えると部分最適で仕事をしているのではないでしょうか。モノ作り(工業の時代)はそれでもよかったかもしれません。70年~80年代には、日本はマネジメントとして「工業の時代」の頂点に立っていたと言えます。

ところがが、90年以降になると、モノが豊富になり売れにくくなりましたね。開発途上国が低価格製品を供給するようになり、日本製の高品質(むしろ過剰品質) なモノは売れなくなってきたのです。そしてモノではなくサービスへとニーズが変化していったわけです。それは「工業の時代」の終わりを意味します。そして失われた30年が始まったのです。

一方、欧米は80年代に日本製品の品質に驚きそれに追いつこうと幾多の努力をしましたがうまくいかず、別のアプローチを試みたのです。その一つが業務プロセスの標準化です。幸か不幸か欧米(特に北米)の現場の作業者のレベルは日本の平均的作業者のレベルより低く、かつ定着率も高くないので、現場の創意工夫はさほど期待できませんでした。ですから誰でも同じ作業ができるように業務(プロセス)を標準化し、職務記述書(Job Description)のような形で標準化せざるを得なかったわけです。人がいつ辞めても別の人が同じ業務ができるように。

逆にそのことが功を奏して、業務プロセスの改善・改革が進むようになったようです。ここからBPM(ビジネスプロセス・マネジメント)さらにBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)にまで発展できるようになりました。そしてBPM/BPRでは、プロセスの階層構造を重要視します。レベル1、レベル2、レベル3、...という具合です。

プロセス階層構造BA方法論

 

先週紹介した、Gutsy-4 の対象領域 「マーケティング」、「人的販売」、「商品開発」、..のプロセス階層レベルはすべてレベル1プロセスです。欧米の先進企業ではなんとレベル4までの業務プロセスが標準化されていることが多いようです。プロセスの階層構造は組織の構造にほぼ対応します。例えば以下のようです。

  • レベル0:事業戦略: 全社 : 事業戦略の立案。経営機能の複合。
  • レベル1:経営機能: 事業部: 事業戦略を経営機能に分解した個別戦略
  • レベル2:業務機能: 部  :個別戦略を実現するための業務改革設計⇒戦術
  • レベル3:上位プロセス: 課: 業務改革を業務プロセスに具体化し
  • レベル4:中位プロセス: 係の仕事、 アクティビティレベル(正常プロセスのみ)
  • レベル5:タスク   : 担当者の仕事

日本での業務プロセスの改善はいきなり担当者の業務をヒアリングし分析して改善しようとすることが多いですね。そうすると、そこではその個人特有の作業までプロセス化しがちです。特殊なケース(1年に数回もしくはそれ以下の頻度)、例外処理などです。しかもその個人の業務は階層構造で見ればかなり低いレベル(レベル5以下)で、その改善が経営課題には結びつくとは言いづらいものです(ほとんど期待できません)。

そうではなく、経営課題を解決するためには階層構造の上位のレベル2かレベル3でボトルネックを明確にし、その要因となるレベル3プロセスを明確にし、つぎのレベル4プロセスに落とし込んでいくことが重要です。すべての個人作業までプロセスを分析する必要はなく、上位プロセスのボトルネックに関連する(トレースされる)下位プロセスだけを変革すればよいのです。そして必要に応じてIT化し定着する。このIT化はローコード開発でもかなり可能です。このようなアプローチでローコード開発を活用すると、かなりの業務改革まで可能になります。

しかし、いきなりレベル5の担当者業務改善をローコード開発で実装しても肝心の経営課題の解決とは程遠いものになってしまいます。