ビジネスプロセスとBA方法論(3)
業務プロセスの標準化のメリット
最近話題のプロセスマイニングとBPM
アドオン/カスタマイズのないERP/SAPがまさに標準化の典型例です。SAPでのタスクは概ねレベル5プロセスに該当します。担当者による仕事のやり方が統一されています(他のやり方ができません)のでそのタスク実行のイベントデータがきれいに収集できます。いつだれがどのタスクを実行したかの履歴が一目瞭然になります。それを実行順に一つ上の階層レベルのプロセスとして可視化したものがプロセスマイニング(実行タスクをつなげることにより上位のプロセスとしてマイニングできるわけ)です。本来あるべき手順とは異なる手順でタスクを実行してしまうコンプライアンス違反も簡単に見つけることができます。タスクの上位階層のプロセスを最適化設計することも容易です。欧米のプロセスマイニングツールの成功事例のほとんどはERP/SAP(カスタマイズなし)であることの所以です。
一方、日本ではほとんどのERP/SAPはアドオン・カスタマイズされていますので、イベントデータが乱れてしまい、その収集が困難になってしまいます。実行を可視化する(同じ条件のイベントデータを収集できる)までに大変な労力(コスト)がかかります。そのため、プロセスマイニングのメリットをなかなか生かせないのが現状のようです。
この例を見るだけでも、業務プロセスの標準化の重要性が分かるのではないでしょうか。
BPM(ビジネスプロセス・マネジメント)でも同様です。単にワークフローを自動化して改善することがBPMではありません。レベル4,レベル5のプロセスを標準化してから自動化を行うことで大きな効果がでます。標準化しないまま個別の仕事のフローを単に自動化しただけでは、プロセスの改善・改革とは程遠いものになります。
RPAの問題点:
日本で大流行りのRPAの多くの導入は問題が多いです。10人の人が、東京、大阪...で。同じ業務をしているとします。業務を標準化せずに個人レベルのワークをロボット化して業務改善するとロボットも10台必要です。確かに工数削減には大きく貢献しますが、その代わりにロボットの費用が10倍かかってしまいます。もし業務を標準化すればロボットは1台で済むのではないでしょうか。個人レベルの業務はレベル5~6です。RPAはさらにその個人の仕事の一部の作業を肩代わりするだけですから、レベル7くらいになります。レベル7作業を標準化するためにはその上のレベル5~6が標準化されていなければ意味ありませんね。さらにその上のレベル4レベル3の標準化も必要です。こうしてみると、プロセスに標準化がそう簡単にできるものではないことが分かりますね。
しかし、前々回に紹介した業務プロセス参照モデルが威力を発揮します。一から業務プロセスの標準化をする必要ありません。参照モデルを使用すれば、ビジネスプロセスのフロー、手順、制約、目的、役割、責任、および成果物についての包括的な文書化を提供します。この情報は業務フローを分析し、改善するために必要な情報を特定するのに役立ちます。さらに、プロセス参照モデルは、プロセスを分類し、プロセスの各部分の目的や意義を理解するのに役立ちます。そして、ビジネスプロセスの問題を特定し、改善策を提案することができます。プロセス参照モデルを使用して、ビジネスプロセスの効率性を向上させ、コストを削減し、品質を向上させることができます。また、プロセス参照モデルを使用して、組織内でのコミュニケーションを改善することができます。ビジネスプロセスのすべてのステークホルダーは、プロセス参照モデルを使用して、プロセスの目的やプロセス内での役割や責任についての共通の理解を確立することができます。
今はやりのChatGPTによると業務プロセス標準化のメリットは次のとおりです。
品質の向上:
- 標準化されたプロセスに沿って作業を行うことで、品質が均一化され、品質の向上が期待できます。
生産性の向上:
- 標準化されたプロセスにより、作業の手順や方法が明確化され、作業効率が向上します。
コスト削減:
- 標準化されたプロセスにより、余分な作業や不必要な手間が省かれ、コスト削減が期待できます。
人材育成の容易化:
- 標準化されたプロセスに従って作業が行われるため、新入社員や研修生の教育・指導が容易になります。
情報共有の促進:
- 標準化されたプロセスにより、作業の手順や方法が明確化され、情報共有がしやすくなります。
リスクの低減:
- 標準化されたプロセスにより、人為的なミスやエラーが減少し、リスクが低減されます。
以上のように、業務プロセスを標準化することには、多くのメリットがあります。業務改善に取り組む際には、プロセス標準化の導入を検討することが重要です。