ビジネスアーキテクトとビジネスアナリシス(3)

ビジネスアーキテクトとビジネスアナリシス(3)

 

それでは、Business Archtechtureとビジネスアナリシスを比較してみます。

Business Architectureとビジネスアナリシスの比較

共通のフレームとして5W1Hを使います(筆者が大好きなものです)。「When:いつ」「Where:どこで」「Who:だれが」「What:何を」「Why:なぜ」「How:どのように」の単語の頭文字を取った整理のフレームワークです。中学か高校で教わったと思います。ただし少し簡略化していますが

  • What:    「何」はモノや情報です。Business Architectureでは情報が該当します。
  • Who/Where: 人に関することなので組織や組織文化です。組織の場所もあり得ます。
    :Business Architectureでは組織やステークホルダーです
  • HowとWhen: プロセスや能力、製品、: バリューストリーム、ケイパビリティ、プロダクトが該当します。
  • Why:    「なぜ」は 戦略やポリシーです。

このフレームでBusiness Architectureを見てください。

Business Architectureのスコープ

BアーキテクチャScope1_2024年2月21日

(画像クリックで拡大表示)

スコープはエンタープライズ全体でビジネス領域(階層)のみにフォーカスしています。
前回解説したように、単一のビジネスユニットや特定の課題・テーマで行うものではありません。

ビジネス階層を次のビジネスビューで表現します。

  • バリューストリーム/ケイパビリティ/組織/情報
  • ステークホルダー/戦略/ポリシー/プロダクト/メトリクス

ビジネス領域(階層)の下のデータ領域、アプリケーション領域、テクノロジー領域は扱いません。
しかし、ビジネス領域のみに焦点を絞り、多くのモデリングツールを使い大変密度の濃い分析をしたビューを提示します。前回解説したようにケイパビリティはエンタープライズ全体のビジネス上のケイパビリティをマップします。ヒートマップ(重要なテクニックです)を駆使してどのケイパビリティが優れていてどこが問題化を特定しようとします。しかし、階層構造を形成しますから完成するのに時間もかかります。

次に、ビジネスアナリシスの活動のスコープを見てみます。

ビジネスアナリシスのスコープ(BABOKガイドV3)

BアナリシスScope1_2024年2月21日

(画像クリックで拡大表示)

BABOKガイドの知識エリア「戦略アナリシス」の「現状を分析する」タスクの要素に5W1Hに該当するものが記載されています。

  • What:     内部資産:エンタープライズの資産です。有形無形の資産があります。情報資産もその一部です。
  • Who/Where:  組織構造と組織文化:
    組織構造はエンタープライズで働く人々の形式的関係を規定します。報告体制も。
    組織文化とは、組織の構成員が共有する信念、価値観、規範などです。
  • How/When:  能力(ケイパビリティ)とプロセス 能力とプロセスは、エンタープライズが実行するアクティビティーを表します。
    エンタープライズが保有する知識、提供するプロダクトとサービス、サポートする機能などがあります。
    そして、能力(ケイパビリティ)中心のビューとプロセス中心のビューがあります。
  • Why: ポリシー:エンタープライズのさまざまなレベルで意思決定のスコープを規定します。

さらに5W1Hに横ぐしを差すように「ビジネスアーキテクチャ」と「テクノロジーとインフラ」まであります。

  • ビジネスアーキテクチャ: 現状のすべての要素がどのように関係しており、どのように補い合っているかを理解します。
  • テクノロジーとインフラ:エンタープライズが使用する情報システムは、プロセスの実行、意思決定、サプライヤーや顧客とのやり取りにおいて人々を支援する。インフラストラクチャーは、物理的なコンポーネントと能力に関するエンタープライズの環境です。

これらすべてをまとめると、簡略化したエンタープライズ・アーキテクチャが構成されていることがわかります。

そして、ビジネスアナリシスのスコープはエンタープライズ全体(DXの場合)を対象にする場合もあれば、プロジェクト単位で行うなど、さまざま(コンテキスト次第)です。また、特定のテーマ(これもコンテキスト)に関してビジネスアナリシスを行うこともできます。

ビジネスアーキテクチャのみならず、テクノロジ-、インフラを含むエンタプライズアーキテクチャ全体を対象にチェンジを定義します。ただしBusiness Architectureに比べるとその分析の密度はそれほど濃いものではありません。必要なチェンジを特定するのが目的です。チェンジする必要のない要素は後回しするという考え方です。活動の目的が異なるということです。

2つの活動のスコープを並べてみるとよくわかります。

Business Architectureとビジネスアナリシスの比較

Bアーキテクチャ_BA比較_2024年2月27日

(画像クリックで拡大表示)

上記比較の図を見るとよくわかりますね。

共通な部分が多いことが分かります。そしてビジネスアナリシスの活動範囲(スコープ)はBusiness Architectureの活動をカバーしていることが分かります。