.3 バリューストリームマッピング
目的
バリューストリームマッピング(物と情報の流れ図としても知られている)は完全な事実ベースで時間経過とともに、製品またはサービスを顧客(内部、あるいは外部)に届けるのに必要な活動の流れ(ストリーム)を表現します。 端から端までのプロセスにおける潜在的な改良のエリアを識別するために使用されます。
概説
バリューストリームは、製品および(または)サービスを原料から顧客まで届けるのに必要な物と情報のフローを表わします。バリューストリームマップ(VSM)はバリューストリームをスナップショット(瞬間画像)を捕らえるグラフ表示したものです。
広く使用される2つのメイン・タイプのバリューストリームマップがあります:
- 現在の状態のバリューストリームマップ:実行に責任を負う人々によって適用されている、バリューストリームを描きます。通常、改善の機会を識別するための出発点として既存のプロセスの分析に使用されます。
- 将来の状態のバリューストリームマップ:最新の状態とそこから派生したもので、バリューストリームが改善を実施した後にどう見えるか示します。アジャイルな環境では、通常この図形は単純でホワイトボード上で描かれます。それはビジネスプロセスをリエンジアリングしソフトウェアの使用を最適化するのを支援するために使用することができます。例えば、プロダクトの発見からのリリースまでの期間を縮小するために、ソフトウェア開発プロセス自体をリエンジニアしチューニングするためにも使用できます。
要素
下記は、バリューストリームマップの作成のアプローチ方法です。
準備
- 組織横断的チームを集める。アジャイルな世界では、これは、ビジネスドメイン知識およびテクニカルチーム・メンバー(開発者、テスト担当者およびアーキテクトのような)を含むべきです。しばしば、ビジネスアナリストを務める誰かがセッションをファシリテートするでしょう。
- バリューストリームマップのオーナーをアサインする。理想的には、これは現状のプロセスについての深い理解を持っている人です。
- 製品、製品群あるいはサービスを選択して、バリューストリームマップのスコープを定義する。
- 逆トレースできるように受け取られた顧客価値を識別する。
現在の状態を作る
現在のリューストリームマップは下記ステップに続いて捕らえることができます:
- . バリューストリームマップを観察するかシミュレートする。
製品(あるいは製品群)パスを顧客に最も近い最終地点からスタートし、最初に向かって逆方向にプロセスを記録します。 - バリューストリームマップを描く。
- 情報の流れを捕捉する。
機能へのバリューストリームは重大な情報です。情報の流れは、注文、スケジュール、在庫期間、切替時間、サイクルタイム、オペレーターの人数、など(それらに限定されませんが)です。 - 略図と順序を備えたフローの各ステップを示すモデルを作成する。
プロセスにおける改善の機会を識別するために必要な分析を支援するためには、プロセスのステップ上に時間/コストの価値を確実に含めてください。もし必要ならば、これらの時間の価値が見積られるかもしれません。より詳細な内容が利用できればできるほど、改善の機会を識別するのがより容易になります。 - バリューストリームマップの妥当性を確認する。
現在のバリューストリームマップの最初のドラフトは、つぎの改善フェーズに移行する前に、その妥当性が確認されていなくてはいけません。
現在の状況を分析する
BABOKガイド・バージョン2.0 (9.25根本原因分析)に述べられているように、 (余剰在庫のような)付加価値のない ものから(変換プロセスのような)付加価値のあるステップを識別するために、現在のバリューストリームマップを分析することができます。さらに付加価値のないステップも(規定要求を満たすような) 必要なものはどれで、 (過度の書類事務のような) 不要なものはどれなのか、分析することができます。
将来の状態を作る
将来の状態のバリューストリームマップは以下のように描くことができます:
- 改善エリアを識別する。
付加価値のない不必要なステップは無駄の源で除去することができます。チーム・メンバーは現状のバリューストリームマップ上でこれらのエリア (リードタイムを減少するような)をマークすることができます。 - 将来の状態のバリューストリームマップを捕捉する。
無駄(不必要な待機時間、過度の管理上のペーパーワーク、過度の在庫など)を排除した後、どうバリューストリームが変わるかを示すバリューストリームマップを描いてください。
一旦将来の状態が明確になれば、改善イニシアチブの目標として使用することができます。
プロセス改善を実施する
- ITシステム、トレーニングおよび変革など改善の実行に必要な材料を識別します。
- 改善を実施します。アジャイアルなプロジェクトにおいてプロセス改善を実施する際、バリューストリームマッピングが最も活用されます。ビジネスプロセスの中で行なわれる変革は、しばしば支援するソフトウェア・プロダクトのインプリメンテーションあるいは、その変更を要求することになります。これらの変更または機能拡張の要求はアジャイルイニシアチブにおいてバックログアイテムとして取り込まれます。
一旦改善がなされれば、将来の状態は最新のバリューストリームマップになり、次の改善サイクルの出発点として使用することができます。
下図はバリューストリームマップの例です。
【図のクリックで拡大表示】
使用上の注意
長所
- プロセスフロー図より包括的。
- 改善を実行するために青写真を提供する。
- プロセスの無駄とボトルネックについての共有される理解を確立する。
- さまざまなステ-クホルダーに共通のビジュアルな言語を供給する。
短所
- 他の視覚的なモデリング技法と比較して構築することが容易でない。
- 捕捉したすべての情報が威圧的に見える。
- マッピング麻痺。改善フェーズに移ることをしないで、現状のバリューストリームマップを完璧に完成させようとしがち。
- 知識集約型もしくは非定型の業務には適用できない。
- 破壊的、あるいはリエンジニアリングアプローチを主導する。継続的改善努力ではうまくいかない。
バリューストリームマッピングについての参考文献(清水)
http://www.itmedia.co.jp/im/articles/0803/24/news136.html