1 はじめに
1.1 ビジネスアナリシスはどこにでもある
ビジネスのいろんな場面での問題解決の手段として、ビジネスアナリシスが脚光をあびつつありますが、もっと広く多様な実務への活用を軌道に乗せるにはさらに多くの努力が必要だと感じています。 ビジネスアナリシスと言う言葉が何か高度な概念の響きをもっていて専門家に任せておけばよいという意識が強く、ビジネスの実務者にとって少々近寄りがたいのではないか、あるいは概念や手法を理解しようとすることもまく、現実の問題にどう適用すればよいかの意識に至っていないのではないかと思います。
ビジネスアナリシスは誰もが日常的に使っている、どこにでもある計画の立案や問題解決の方法と何も変わらない身近なものなのだということを、やさしく紹介していくことがこのコラムの目的です。 そのような理解が進めば、容易に実務上での利用が進むのではないかと期待しています。 いろんな視点からのトピックスを読んでいくうちに、ビジネスアナリシスの本質的な姿が理解できると思います。 一方、ビジネスアナリシスの概念や手法をすでに学んだ人達には、今までと異なった平易な視点から理解することによって、実務の現場で役立ついろいろなヒントを見つけることができると思います。 ビジネスアナリシスはどこにでもあるのだということに気づいていただければ、このコラムの目的は達成します。
ビジネスアナリシスの「ビジネス」とは何かということについては、何でもかまいません。 ビジネス上の問題は当然ですが、日常生活の問題でも、教育の問題でも、医療や治療の問題でも、スポーツの問題でも、あるいは、政治や経済や行政の問題でも構いません。 ビジネスアナリシスと言うひとつの考え方を活用すれば、いろんな問題解決に共通に利用できるということだと理解してください。 言い換えれば、我々の身の回りで発生する多くの問題は、ビジネスアナリシスと言う共通の概念でその解決策を効果的に構築し実行できるのです。
1.2 いろんな視点から見て、自由に考えて、柔軟に対応する
何か計画を立てたり、課題を解決したりしようとするときには、どのような手法を用いて、どのような手順で実行すれば最も効果的であるかを検討するはずです。 そのような多様な手法や手順を実務の場面に応じて最も効果的に構築できるように概念として体系的に整理したものがビジネスアナリシスであるとも言えます。 ビジネスアナリシスの入門書や解説書では、手法や技術が体系的な構造として記載されていますが、実務において、何をどのような手順で実行すればよいかの説明がありません。 実務上での問題は多種多様であり、いろんな視点から観察し、多角的な情報を集めて分析、理解し、種々な方法を取捨選択して、効果的な解決方法を見つけなければなりません。 ここでは、そのような多様な場面でのさまざまな考え方を紹介して、いろいろな考え方を身につけるための支援をしようと思います。 発生した問題を見る視点を変えますと、全く違ったものが見えてきたり、今まで気付かなかったものが見えたり、考え方が変わったり、とんでもない発見すらあります。 そんな場面でのものの見方や考え方を断片的ですができるだけ多く紹介します。 それらを積み重ねていきますと、ビジネスアナリシスを考える視点と能力の幅が広がってゆき、自分なりのビジネスアナリシスの概念ができあがってゆきます。 ビジネスアナリシスの概念の本質を理解して、実行する人それぞれが信念を持って自由に適用することが良いと思います。 「ビジネス」の対象は多岐にわたるばかりでなく変化します。 いろんな場面で柔軟に対応できることが本当のビジネスアナリシスだと考えてください。
参考:BABOK(R)ガイド2.0のビジネスアナリシスの定義:
- ビジネスアナリシスは、タスクとテクニックの集まりである。組織の構造とポリシーおよび業務運用についての理解を深め、組織の目的の達成のために役立つソリューションを推進するために、ステークホルダー間の橋渡しとなるタスクとテクニックをまとめて、ビジネスアナリシスと呼ぶ。