11 ビジネスアナリシスは考える習慣の育成
11.1 思考、分析をする習慣の育成
ビジネスアナリシスは考え方の方法論ですから、具体的な解決方法の回答がそこにあるのではなく、どうやって回答を導き出すのかという習慣を育成することだとも言えます。 ビジネスアナリシスの実行は極めて柔軟ですから、決められた手法があるわけではありませんから、最適な解決方法を自分で考えて選ばなければなりません。違った言い方をするならば、ビジネスアナリシスは発生した問題の真実を捉えて、分析をしながら、無数にある問題解決の手段や方法をどのように組み立てて利用すれば最も効果的に問題解決ができるかを考えることです。 従ってビジネスアナリシスの活用を日常のビジネスに定常的に利用するならば、ビジネスのあり方や身の回りの種々な問題の解決について常に考え、分析する習慣が身につくことになります。そのような習慣が生まれますと、特に明確な課題の解決が支持されたり、問題が発生した場合だけではなく、日頃の業務の中でのあらゆる場面で常に考えるという習慣が生まれることになり、無意識のうちに問題解決をしたり、問題の発生を回避したりすることにつながり、その相乗効果は非常に大きなものとなります。
11.2 体系的思考の育成
問題を解決しようとするときにはいろいろな行動を無秩序に実行しても解決にならないばかりか、かえって混乱を導くことさえあります。 問題を解決するには、まず問題の実態を詳しく調べて問題の構造を理解し、その現状を認識し、原因を突き止めて、最も適した解決方法を組み立てて実行することが必要になります。 このような問題解決のプロセスはその問題の現象や性格に適した一連の体系に沿って考えることが効果的であることがわかります。 それがビジネスアナリシスの本質なのですが、まず、何らかの解決するべきテーマが与えられた時に、その対象の概要を把握して、どのようなプロセスで問題を解いてゆけばよいかを体系的に考える習慣ができてゆきます。 このような判断は、経験の蓄積によりかなり直感的に行えるようになり、業務処理における体系的思考が育成されることになり、あらゆる問題解決の合理的処理の文化が育ちます。 そのような文化が組織の中に定着することは、思考、判断の合理性と迅速性を生み、業務推進の効率的処理に寄与します。
11.3 システム指向の定着と課題発見と解決の日常化
業務の推進において、常に考え、分析し、体系的な思考過程により合理的に判断する習慣がビジネス組織の上層部に定着して実行されますと、それは実務を通して現場の担当者にも当然の常識的処理過程として伝達されてゆきます。 しかもそのような伝達過程は強制されたものではなく、自然な形で伝達されてゆきますので常識として身に付きます。そうなりますと経営の上層部から現場の担当者までが同じ思想で考え、かつ判断するようになり思想の共有と意思の伝達とが容易に進みますので、意思の疎通が容易になり組織全体が一体化された経営体になります。 このようなシステム指向の組織になりますと、常に考えるという習慣が定着し、日常の業務をただ処理するのではなく常に意識をもって処理することができますので、そこで多くの課題が発見され、解決のための新たな提案が日常的に生れてくる体質になります。 このような文化の構築は教育や訓練によって定着させることは難しく、業務の中から自然に確立されることになり、その価値は測り知れないものとなります。
システム的思考の考え方や手法についての概念や技術についての理解を深めるために、組織全体の教育やトレーニングを実施することは効果がありますが、その場合にはあくまでも現場の実務の問題として実例に即した応用を背景に実例をもって議論と理解を深めることが必要であって、単なる概念論や技術論の座学になっては効果がありません。
BABOK®の知識エリア「基礎コンピテンシー」
BABOK®の第8章基礎コンピテンシーには「分析的思考と問題解決」があります。その中には、下記の5つのスキル/コンピテンシーが定義されています。
- 創造的思考: 問題を解決するためには新しいアイデアを創出する必要があります。
- 意思決定: 意思決定をするための基準を十分理解する必要があります。
- 学習: ビジネス領域とその機能を理解し、組織の利益に結びつけるためには常に学習する必要があります。
- 問題解決: 問題を定義し解決するためにはその真の原因を明確にし、ソリューションが問題を解決できることを確実にする必要があります。
- システム思考: 組織内の人(People)、プロセス、技術(テクノロジー)などが相互に影響し、全体としてシステムを構成していることを理解する必要があります。