2月14日に開催された「アジャイル開発を成功に導くビジネスアナリシス」セミナーのレポートです。
第1部: 超上流工程の基礎BABOK®とそのアジャイル拡張 by 清水
BABOKはウォーターフォール開発に限らず、アジャイル開発にも利用できる共通の知識体系です。本セッションでは、超上流工程のグローバルスタンダードであるBABOK®の概説と、7月にIIBAとアジャイルアライアンスから発表されたアジャイルBABOK®を解説します。
また、昨年11月にラスベガスで開催されたBBC2013で発表された多くのアジャイル開発のセッションの中から重要なものを紹介します。
BABOKガイドに対するアジャイル拡張の目的は、アジャイル・ソフトウェア開発アプローチに対するビジネスアナリシスのするとともに、ビジネスアナリシス・実践者に次のものを提供することです:
- ビジネスアナリシスのためのアジャイルな実践への入門、
- アジャイル実践者のためにビジネスアナリシステクニックの概観、
- アジャイルなプロジェクトで働くビジネス・アナリストによって使用される典型的な実践例の定義、そして
- 新しい、また変革されたビジネス・アナリストの役割、スキルおよびコンピテンシの概観。
「BABOKガイド アジャイル拡張版」では、ビジネスアナリストにアジャイル開発を支援する優れたテクニックおよびツールを提供します。
成功するビジネスアナリシスを導く法則は2つのフレームワークに分類することができます:
発見的フレームワークと、デリバリー・フレームワークです。
発見フレームワークはプロダクトに関するWhatとWhyに対処します。
有効な発見は3つの基本原則にから成ります:
- 全体を見る、
- 顧客として考える、
- 何が価値があるのかを決めるために分析する、
デリバリー・フレームワークはプロダクトのHow(やり方)とのWhen(期間)に対処します。
有効なデリバリーは4つの基本原則に支援されます:
- 実際に使える例を使用する(Get Real Using Examples)、
- 何が実行できるか理解する、
- 協働と継続的改善を促進する
- 無駄を省く
「全体を見る」中のテクニックとして、バリューストリームマッピングがあります。
目的:バリューストリームマッピング(物と情報の流れ図としても知られている)は完全な事実ベースで、時間経過とともに、流れ(ストリーム)製品またはサービスを顧客(内部、あるいは外部)に届けるのに必要な活動の流れ(ストリーム)を表現します。
端から端までのプロセスにおける潜在的な改善のエリアを識別するために使用されます。
BBC2013カンフェランスでもアジャイルは重要なテーマの一つです。数多くのセッションが催されました。代表的なものを紹介します。
ビジネスアナリストが知るべきアジャイルテクニックのトップ10です。
最近出版されたスクラム知識体系(SBOK™)ガイドを解説しました。
SBOK™については別途Webページで解説しましたので、そちらを参照してください。
第2部: IIBA認定コース「失敗しない要求開発」 by 銅谷 克樹 (PMHコンサルティング)
この研修の基本コンセプトです。
私たちは仕事で「成果」を出すことを求められています。そのためには「意図のある行動」をする必要があります。その結果が成果ですが、常にプラスの成果が出るとは限りません。ときにはマイナスの成果(すなわち失敗)が出ることもあります。プラスになれば、その要因を考えて継続、発展します。マイナスの場合はその要因を分析し次回にはプラスになることを考える必要があります。また、やってみて初めて分かることも多く、その結果から多くの気づきを得ることができ、知恵につながります。
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行動するために「考える」のですが、「考える」だけではなかなか行動に結びつきません。行動のエネルギーを大きくするには「納得」が必要です。ひとは何により納得するのでしょうか。それも研修の大きなテーマです。「考える」→「行動」→「成果」→「知恵」→「考える」のサイクルを研修の中で何度も回します。そのために演習、ロールプレイ、ゲームなど、多くの「行動」を実際に行う研修です。研修の中の「成果」はプラスでもマイナスでも構いません。それから何を気づき、どれだけの知恵を出すかが重要です。実業務の中では失敗はしない方が良いのですが、研修中の失敗は大歓迎です。要はそこからどれだけのことに気づき、自分の知恵とするかが重要です。それが本当の学習といえます。
質問力を強化するためのスキルです。質問により、顧客の潜在的問題をその影響が大きく深刻な物なのか、そうでないのかを聴きます。また問題が解決した場合のメリットについても聴き、プラスマイナスの合計すなわちトータルな利益(価値)を算出します。この価値の大きさを優先順位付けの基礎に使うことができるようになります。実際には上記「考える」→「行動」→「成果」のモデルに沿って、ロールプレイを行い、その「成果」(プラスとは限りません)を味わいます。インタビュー相手(顧客)の気づいていない潜在問題が顕在化されると、一気に話が進みます。その時の顧客の気持ちはどんなものでしょうか。納得して行動(例:発注)してくれる気持ちとはどんなものでしょうか。ロールプレイではその時の顧客の気持ちを味わうこともできます。
この研修の全体像です。モジュール1は「BABOK®2.0」の概要を学習します。
モジュール2「顧客のビジネスを知る」はビジネス要求を上記「考える」→「行動」→「成果」モデルを使って、探求します。テクニックとしてSWOT分析も使用します。ビジネス環境を効果的に分析することにより、顧客の気づいていない真のニーズ(ビジネス要求)を明確にします。この時のポイントは、RFPは正しいものだという思い込みを外すことです。ビジネス環境を分析し、SWOT分析を行うと、RFPに書かれていない重要なビジネス要求に気づいてもらいます。RFPに抜けていたビジネス要求を明確にしてくれた時、顧客はどんな気持ちになるでしょうか。
モジュール3は、前述「質問力」の強化です。前述のように、質問によりステークホルダー要求を明確にしていきます。
この研修のコースカタログはこちらです。→ 「失敗しない要求開発」カタログ(14CDU/14PDU付)
公開コースはこちらです。 → 公開コース