12 ビジネスアナリシスは発想力の育成
12.1 ビジネスの状態は多種多様
いちがいにビジネスと呼んでもその内容は多種多様であってその現象はもちろんのこと、その問題背景などすべての状態が同じものはないと言えます。もし同じであれば、問題が発生した場合には、決められた最も良い解決方法を選んで実行すればよいことになります。ビジネスは外から見える部分と見えない部分があり、容易にわかる状態があれば、高度な分析をしないとわからないものもあります。 ビジネスアナリシスの価値はそこにあるのです。ビジネスの本当の状態を知るには、その表面的現象だけではなく、それを構成する内容、ビジネスの環境、問題発生の原因、など多くの視点からの理解と判断が必要です。
12.2 現象は同じでも背景は異なる
外見は同じように見えるビジネスの現象でも、その背景や構成要素、発生原因などが全く異なることが良くあります。 他所で発生したことと類似であるからその原因は同じだと思い対策をしたならば、全く異なる要因があってますます問題を悪化させてしまうことがあります。ビジネス環境の背景を理解することは原因追及にも非常に重要です。 例えば、ある製品の売れ行きが落ちてきたB社が類似製品を出しているA社では価格を下げて業績を回復したことを見て、追従して価格を下げたところ、売り上げは伸びずにさらに収益を悪化させたとします。実はB社の製品は使い勝手が悪く、これまで高値であった使い勝手の良いA社製品の価格低下により、適切な価格になったA社製品に顧客が流れたという現象が背景にあったのです。B社では製品そのものの改良をしなければ問題解決にならないことに気が付かなかったのです。
12.3 最適解はそれぞれ異なる
上記の例でもわかるように、同じ現象に対する問題解決の方法は全く異なることがあります。もし、両社とも同じ製品レベルを持ち、品質技術的にも同等な製品を持っていたとしても、売上を伸ばすための解決策は両社の経営背景により異なると考えられます。 A社が製品技術を背景に高度な製品を投入し、B社はマーケティング能力を駆使して消費者に浸透を図ることもできますし、さらに生産技術を駆使して原価低減を図り価格競争に持ち込むことも可能です。この場合には組織の財務力も課題になります。このように表面的に同じに見える課題解決に対して、異なる組織では利用可能な資源と戦略を活かして全く異なる最適解を選択することができます。
12.4 発想を豊かにする
組織はそれぞれに長所と欠点を持っています。周囲の環境も異なります。周囲の環境は自分がコントロールできない分野が多いのですが、長所と欠点をどう生かすかは自分の判断と実行力でコントロールできるはずです。これらを組み合わせると多くの戦略が生まれます。固定観念を捨てて、多様な視点から自由に考えることがビジネスアナリシスです。自分たちが動けば相手はどう動くかの判断も必要です。問題解決はどのような手法をどのように使うかの組合せです。発想を豊かにして可能性にチャレンジすることが問題解決につながります。
12.5 ビジネスアナリシスは知識と経験による発想力の育成
ビジネスに関わる人たちはそれぞれ異なる知識を持っています。経験の積み重ねにより知識は知恵になります。知識と知恵を組み合わせると多くの発想を生みます。それらはさらに経験により高度な判断を生みます。人が集まって組織になると文化が生まれます。ビジネスアナリシスは知識と知恵と経験による発想力の文化です。
BABOK®の知識エリア「エンタープライズアナリシス」 と 最適解
知識エリア「エンタープライズアナリシス」には下記5つのタスクがあります。
- ビジネスニーズと定義する
- 組織の能力ギャップをアセスメントする
- ソリューションアプローチ(最適解)を決定する
- ソリューションスコープを定義する
- ビジネスケースを定義する
3番目の「ソリューションアプローチ(最適解)を決定する」タスクで重要な要素として
- 代替案の作成
ビジネスの目標を満たし、識別した能力のギャップを埋めるために、候補となる選択肢をなるべく多く識別する....
そして代替案を生み出すための方法としてブレーンストーミングを用いることを推奨しています。