BABOK®ガイド V3(パブリックレビュー版) 第9章 基礎コンピテンシ (分析的思考と問題解決)

知識エリア【基礎コンピテンシ】

基礎コンピテンシは部分的な変更・増強です。バージョン3のコア・コンセプトを理解するために、一部が増強されました。筆者の試訳です。

基礎コンピテンシ

V3_UC_Overview_2014年7月12日

  •  ここで記述された基礎コンピテンシは、ビジネスアナリシスに特有なものではない。
  • 読者が要求される基礎的なテクニックの範囲に気づいておりそれらが遂行されることを可能にするテクニックおよび知識、および適応可能なビジネス・アナリストへさらに調査するためにそれらに基礎を提供することを確実にするためにここに記述される。
  •  基礎コンピテンシは以下の6つのカテゴリーに分類される。
    ・分析的思考と問題解決
    ・行動特性
    ・ビジネス知識
    ・コミュニケーションスキル
    ・人間関係のスキル
    ・ビジネスアナリシスのツールとテクノロジー

 

9.1 分析的思考と問題解決

分析的思考と問題解決のコアコンピテンシは以下の通り:

  • 創造的思考
  • 意思決定
  • 学習
  • 問題解決
  • システム思考
  • 概念的思考
  • ビジュアル思考

 

新しく2つのコアコンピテンシーが追加されましたので、その内容を紹介します。

「概念的思考」と「ビジュアル思考」です。

以下筆者の試訳です。

9.1.6 概念的思考

.1 目的

  • ビジネスアナリストは大量でかつ詳細なさまざまな情報を常に入手している。ビジネスアナリストは、その情報がより大きなピクチャおよびビジョンにどのように入るか理解する方法を見つけ、そのビジョンにとってどの詳細情報が重要なのかを見つけ、そして抽象的な情報をつなぎ合わせるために概念的思考テクニックを適用する。

.2 定義

  • 概念的思考は、コンテキスト、ソリューション、ニーズ、変革、ステイクホルダー、価値の間のつながりを抽象的にビッグピクチャの中で理解することに関係している。それは明らかには関連づけられないかもしれない情報およびパターンを理解して接続することもある。概念的思考は詳細がより大きなコンテキストに入ることを理解することでもある。また、過去の経験、知識、創造性、直観および抽象的思考を、定義しずらく関連しにくい代替案、選択肢およびアイデアを考え出すために使用することもある。
  •  ビジネスアナリシスにおいて概念的思考は、特にステークホルダーが変革によって自分自身他を理解し促進するのを助け、根本的な問題か機会、モデルあるいはフレームワークに定義しずらい、リンクする要因に関係している。概念的思考は多くのステークホルダー、目標、リスク、詳細とその他の要因からの異種の情報を関連づけて接続するために必要である。ソリューションに対する、選択肢および代替案を生成し、他の人にこの情報を伝える。また、概念の作成およびコミュニケーションによって他の人の中のアイデアの創造を促進する。

.3 有効性の評価基準

  • 異種の情報を接続し、また、よりよい関係を理解するように行動している
  • 確信を確認し、ステークホルダーと概念を共有していることを理解している
  • 情報と不確実性を組み合わせて使用し、抽象概念を公式化している
  • 状況を理解するために過去の経験に照らし合わせている

 

つづいて、ビジュアル思考の試訳です。

9.1.7 ビジュアル思考

.1 目的

複雑な概念およびモデルを、理解し得るビジュアル表示へ変換するする能力は、ビジネスアナリストがステークホルダーに関与し、その示している概念を理解してもらうことを支援する。

.2 定義

ビジュアル思考テクニックは、ビジネスアナリストが議論している概念またはシステムのグラフ表示を作成することを可能にする。これらのグラフ表示のゴールは、ステークホルダーに示されている概念を容易に理解することができるようになることと、それに入力を供給することができることである。ビジュアル思考は、アナリストが抽象的概念を作り、次に、それを表現する適切なグラフィカルなパーツを見つける必要がある。

ビジュアル思考は、非視覚情報を伝えて統合するために、単純な視覚化概念、グラフィックス、モデル、図形および構成物を視覚化し作成する。ビジネスアナリシスを行なう際に、大規模な情報量と、コンテキスト、ステークホルダー、ニーズ、ソリューション、変革、価値の間の複雑な関係が伝達される。ビジュアルは、この情報とその複雑さを表現し、ステークホルダーと聴衆がより速く学習でき、情報を処理でき、各々のコンテキストの要点を理解できるようにしてくれる。

ビジュアル思考は、さらに聴衆が他のもののコンテキストをより明白に理解し評価すると同様に彼らのコンテキストへ概念をより速く自由に取り入れることを可能にしてくれる。

.3 有効性の判断基準

  • 複雑な情報は、ステイクホルダーに理解し得る視覚的モデルを通じて伝達されている。
  • ビジュアルは参加者に、比較、パターン発見およびアイデアマップを可能にしてくれる、
  • 学習の増加、記憶の迅速化、そして有効なビジュアル化の達成による生産性向上
  • ステークホルダーの関与のレベルは、テキスト単独の場合より深い
  • ステークホルダーは、文章のみによる提示内容では気が付かなかったかもしれない重要な情報を理解する。

 

「概念的思考」も「ビジュアル思考」もBABOK®バージョン3の6つのコア・コンセプト

  • 【変革(Change)】:組織的に制御された変革(トランスフォーメーション)
  • 【ニーズ】:ステークホルダーにとって潜在的価値のある問題、機会、または制約
  • 【ソリューション】:コンテキストにおいてニーズを満たす具体的な方法
  • 【価値】:コンテキストにおいてステークホルダーにとって重要なもの
  • 【ステークホルダー】:変革又はソリューションと関係を持つグループまたは個人
  • 【コンテキスト】:環境のなかで変革を包含する部分

を理解する上で不可欠なコンピテンシです。