27 目標の明確化により全体の構想をつくる
27.1 何をどうしたいのか
自分の現在の状況と周囲環境が理解でき、現状の問題点が明確になりますとその解決のために何をしなければならないかの模索をして、その具体的構想が生まれてきます。このような検討は、まずは仮説を設定して順次具体的に検証していくことが一般的ですが、その後の一連の行動の基本となるのは解決時点での明確な目標の設定です。 解決時点でのあるべき姿を描くこと、現在との比較でどのように変わるのかを明確なイメージとして持つことです。 いちどの計画で達成が難しければ複数のステップに分けて段階的に達成することも良いことです。そのような場合には、それぞれの段階での目標を明確にすることが必要です。
27.2 具体的目標の設定
解決時点の状態のイメージが設定できますとその具体的状態を目標値として設定することが必要です。可能な限り定量的な設定が望まれます。その場合に、現在との比較において何がどのように変化するのかの定義が必要です。一つの目標値である必要はなく、必要な評価指数を設定することにより、解決時点での解決状況の特性を評価することができます。 複数の評価指標を設定すれば、残された問題点の対応にも有効に利用できます。 一般に、問題解決はシステムや体制の完成時に同時に終了するのではなく、実務への投入により徐々にその効果を増加していくタイプのものが多いと言えます。そのような場合には複数の評価指標の推移を見ながら実行の中で効果を確認していくことも効果的です。
27.3 やりたいこととその背景能力の整合性
問題解決のプロセス検討においてはいろいろな構想や具体的アイデアが浮かんできます。非常に基礎的な行動の積み上げや組合せ、あるいは新しい手法の実践、全く異なるビジネスモデルの適用などそのアプローチは千差万別です。最終目標が達成できればどのような手法を採用してもかまわないのですが、その選択評価にもいくつかの視点があります。まずは必要な時間とコストが本質的です。緊急な問題ではコストを犠牲の上で時間との勝負を選ぶこともあります。解決を急がない場合には低コストを選ぶのは常識的ですが、時間をかければコストがかかるという認識が必要です。もう一つ重要なことは実現の可能性です。可能性にはふたつの側面があり、その一つは人材を含む実行技術と必要資源の確保です。難しい手法を始めて実行する場合には実行経験者による指導やマネジメントは非常に重要です。必要資源には人材の他に資金と時間などがあります。 もう一つは実行の推進力です。特に組織的活動が必要な場合には強力なリーダーの下に組織全体の協調と実行能力が必要です。実行したいこととその背景の能力との整合性がなければ良い結果に結び付けることは困難です
27.4 妥当性の確認
ビジネスアナリシスの着手時点において、その全体構想の妥当性の評価は大切です。妥当性にはふたつの視点があり、その第一は実行するべき対象と目標の視点、その第二は実行内容と推進能力の視点です。第一の視点では、現在置かれている組織の経営視点からの冷静な判断が必要です。良くあることですが競争相手がこんなことをしたから我々も負けないようにやろうと言う計画です。そのような判断は間違いではないかもしれませんが、別の戦略を選択しよう、あるいは競争を回避しようと言う選択も多々あるはずです。目標設定においても、完成時点では相手はその先に行っていることの理解が必要です。 実行手段の選択においても、自分たちの実行能力は対応可能なのか、障害はないだろうかなど多様な視点からの妥当性の判断が必要です。
BABOKガイド V3の 知識エリア「ストラテジーアナリシス」 との関係
本日のテーマは今連載で解説しているBABOK V3 の知識エリア「ストラテジーアナリシス」の基本的考え方です。
具体的には「将来の状態を定義する」タスクの内容をやさしく表現したものです。
6.2 タスク: 将来の状態を定義する:
- ビジネスニーズ、およびエンタープライズが現在、ビジネスニーズに関してどう機能するかを理解する。変革のためにベースラインとコンテキストをセットする。
詳しくは 知識エリア:【ストラテジーアナリシス】 の解説をご覧ください。