どこでもビジネスアナリシス (29)

29 関係する組織と人と仕掛けを認識する

29.1 対象テーマに関する総ての関係先をとらえる

ビジネスにおける課題の発生や処理は殆どが組織や人との関係にその原因があります。特に契約に関する問題に関しては意思の疎通が多くの要因になっています。問題を解決しなければならない場面において、まず考えなければならないことは、問題に関係する組織や人を特定することです。その場合、直接の当事者は当然のことですが、さらに間接的に影響を及ぼしている組織や人たちを追究することが必要です。実質的に影響を及ぼしているのは裏の組織や人であることはよくあることです。関係する組織や人たちを見落としなく総て洗い出して、その中から本当に影響を与えている対象との関係を追究していくことが必要です。これらの関係者はステークホルダーとよばれますが、真のステークホルダーを見落とさないようにしなければなりません。                                                       

29.2 課題に対してどのような関係にあるのか

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解決する課題の性格にもよりますが、ステークホルダーとの関係を見極めなければなりません。例えば、顧客との関係に関して言うならば、真の顧客は誰なのか、真の要求をしているのはその中の誰なのか、また、自分たちの担当者もステークホルダーですから担当者とのコミュニケーションや理解はどうだったのか、クレームを受けた場合には、指摘されている表面的な問題と理解してよいのか、あるいはその裏に複雑な問題がからんでいるのか、相手の要求が不適切であったのか、自分たちの理解が誤っていたのか、いろいろな視点からどのような関係があったのかを解明しておく必要があります。発生した問題の経緯と構成を理解するためにも、また、問題解決の方策を検討するためにもステークホルダー間の関係を明確にすることも必要です。

29.3 現場の声を大切に

問題解決において、誰の意見や要望を尊重して決定するかは慎重な判断が必要です。当然のことですが組織の責任者の意見は尊重しなければなりませんが、それが組織としての本当の要求や意見であるかの判断が欠かせません。良くあることですが、組織の責任者は概念的な判断は適切であっても、本当の現場の要求を正しく捉えているとは限らないことがあります。特に計画や企画組織の意見は概念的であり時には理想的であって現場の実情に合致しないことが起こります。計画組織の要求仕様によりシステムを構築したが完成後に現場では使えないことが判明するという事態になります。戦略的にトップダウンにより新しい思想でシステム改革をすることはありますが、計画者と現場担当者との理解と協調が合意されていることを確かめることは大切です。

29.4 すべての関係者の参画意識を構築する

大きな変更を伴う問題解決においては、関係者全体の理解と実行意識がなければ実行段階になって組織全体への展開が停滞したり暗礁に乗り上げたりすることがあります。このような場面では技術的に困難な要因があることは少なく、組織全員の参画意識の問題であることが多く、全員の参画意識を事前に構築することにより、たとえ技術的に難しくても乗り越えて普及することが可能です。精神的なマネジメントが重要な場面です。

29.5 規則、認可、承認、権限に対する関係

関係組織や関係者に類似な実行上の障害として、規則、認可、承認、権限、習慣、などの問題があります。これらは問題解決においてクリアしなければならない障害となりますがどう対応するか、打破するかなど高度な判断が必要ですが、不合理なものは変えていくと言う視点に立って、対応し実行することが必要です。

 

 

BABOK®ガイド V3 のタスクとの関係:

本日のテーマは連載で解説しているBABOK V3の 知識エリア「計画とモニタリング」の「ステークホルダー関与を計画する」 と 知識エリア「引き出しとコラボレーション」の「ステークホルダーとのコラボレーションをマネジメントする」タスクに大きく関係します。

3.2 タスク 【ステイクホルダー関与を計画する】

  • どのステイクホルダーが変革に関連し、ビジネスアナリストが彼らから何を必要とし、彼らがビジネスアナリストから何を必要とするのか、そして協働する最良の方法を記述する。

4.5 タスク 【ステークホルダーとのコラボレーションをマネジメントする】

  • 全面的にビジネスアナリシスのプロセスにステークホルダーを取り込み、かつ彼らに必要とする結果を伝えることができることを確実にするために、ステークホルダーと一緒に仕事をする。