30 組織内部にあるいろいろな障害
30.1 文化や伝統
問題解決の行動にはいろいろな障害に遭遇します。その多くは組織外部における環境との摩擦や、競争の発生、あるいは自分達のミスに伴う不具合の発生などが原因であることが多いのですが、自己組織内部にある種々な障害が原因となって、間接的あるいは直接的に発生している現象が少なくありません。その中には、不適切なマネジメントの判断、技術的能力の不足、実行力の不足、など組織や人的能力に起因することは最も多いと言えますが、組織の文化や伝統に基づく習慣的な判断や無意識な圧力が原因となった不適切な判断、変更への心理的な回避による不適切な選択による結果としての不具合が意外と多いのです。
30.2 古い権威、先輩
意識改革の不十分な組織では、組織の古い権威、あるいは先輩たちの固定概念が、自由な意思決定を阻んでいる現状はまだ少なくありません。多くは、過去の成功体験や過去の常識に基づいているのですが、社会環境の変化を認識して発想を替えなければなりません。創業時の基本精神を受け継いでいくことは重要ですが、環境変化に対応した柔軟な解釈をして伝統を変化させていくことが大切であると考えるべきなのです。
30.3 幹部の意識や意見
組織の責任者としての幹部の意見、意向を尊重することは組織の一体運営からも大切ですが、不十分な背景理解や担当者を無視した独断での決定と行動を指示する幹部もあります。十分な分析や検討の結果と、戦略的判断に基づく決定であれば、リスクがあってもそれなりの理由を理解しなければなりませんが、現場や環境の認識も不十分なままの判断には、是正の要求も必要です。幹部への異議を訴えるには十分な裏付けと熱意が必要であると同時に、対話の習慣を育てることが必要です。
30.4 組織の壁
最も厄介なのが組織間の壁の問題です。この問題は過去の習慣や既得権、あるいは制度の変化を好まない組織文化の遺物といえます。言い換えれば変革意識の希薄なことの証明でもあります。柔軟な組織運営により境界をなくす事は業務改革の基礎であることを理解させることが必要です。最もよい解決方法は組織の統廃合により境界を廃止することや、担当者を入れ替えることなどですが、これは組織幹部の意志と実行力が必要です。古い権威への執着と共に、反対運動を主導する一部の抵抗勢力を排除しなければなりません。
30.5 規則、制度、ルール
組織や人による内部障害の他に、組織内の規則や制度、暗黙のルールや習慣による弊害も多々見受けられます。これらは検討された時点での有効性から設定されたものですから過去には効果的に運用されたものでしょうが、環境が変化した場合には有効性を評価して、必要によって柔軟に変更することが必要でしょう。
30.6 曖昧な意思決定
意思決定の迅速性と共に、決定内容の明確さが大切です。何をいつまでにどうするのか、担当責任は誰なのかの明確化、認可申請の可否、あるいは認可条件など迅速な意思決定は実行のサイクルを効果的に加速します。曖昧な意思決定はビジネスを停滞させ、誤った判断を与えることを認識しなければなりません。