BABOK® V3 パブリックレビュー版 第9章 基礎コンピテンシ 「分析的思考と問題解決」(特別編)

V3_UC_Overview_2014年7月12日

 

「基礎コンピテンシ」はBABOKガイドの知識エリアのひとつですが、具体的なタスクではないのでおろそかにしがちだったのですが、ビジネスアナリストにとって最も重要なのはこの知識エリアなのかも知れません。いや「基礎コンピテンシ」こそ、最重要なスキルといって過言ではありません。まだ解説していない部分を重点的に解説します。 それでは「分析的思考と問題解決」の試訳から。

 

 

 

9.1 分析的思考と問題解決

  • 分析的思考と問題解決スキルはビジネスアナリストが問題と機会を効果的に分析するために必要である。どの変革が最大の価値を提供するのかを特定し、その変革の影響を理解するためにステークホルダーと仕事をする。
  • ビジネスアナリストは、様々なタイプの情報(例えば図形、ステークホルダーの懸案事項、顧客フィードバック、概略図、ユーザーガイド、スプレッドシート)を手早く自分のものにするために、適切な分析的思考を特定して使用する。ビジネスアナリストは、遭遇するメディア、聴衆、問題タイプ、環境を、学習し分析するのに有効な方法を素早く選ぶことができなければいけない。
  • ステークホルダーが状況、変革案の価値、他の複雑な考えを理解するのを支援するために、ビジネスアナリストは分析的思考と問題解決を活用する。
  •  分析的思考と問題解決コンピテンシについて正しく理解できれば、ビジネスアナリストがそのステークホルダーの学習と思考のスタイルを特定することが可能になる。例えば、何人かの人は視覚的に考える人で、情報を文字の文章として読ことよりも、図形とグラフィックスによるプレゼンテーションで提示されることにより、情報をよりよく理解する。このことを理解していれば、ビジネスアナリストにも役に立つ。ビジネスアナリシス・アプローチを計画する場合、聴衆の学習と思考のスタイルに適する方法でビジネスアナリシス情報をコミュニケーションすることが可能になる。

【解説】
V2との大きな違いです。V3では基礎コンピテンシのカテゴリー「分析的思考と問題解決」そのものに解説が加わりました。V2ではカテゴリーに関する解説は何もなく、いきなりコンピテンシ「創造的思考」の記述になっていました。それだけ「基礎コンピテンシ」の意味づけが重要になってきたのではないでしょうか。

3番目のパラグラフに注目してください。ビジネスアナリストがこのスキルを使うのはステークホルダーが状況、変革案の価値、…を理解するのを支援するためです。言い方を変えると、主役はステークホルダーという事を意味します。決してビジネスアナリストがビジネス変革の主役ではないという事を意味します。

 

9.1.1 創造的思考

.1 目的

  • 創造的に思考し、他の人が創造的思考を適用することを支援できれば、ビジネスアナリストは問題解決と機会への新しい考え、アプローチ、選択肢を有効に作成することが可能になる。

.2 定義

  • 創造的思考とは新しいアイデアとコンセプトを生成すること、同様に既存のアイデアの新しい適用方法とコンセプトの新しいまたは異なる関連性を発見することである。創造的思考は問題解決への厳密なアプローチを克服することを支援する。このコンセプトは状況に対して革新的で適切であるべきである。選択肢の特定と提案に加えてビジネスアナリストは、前提条件に挑戦的に質問することにより他の人の中の創造的思考を促進することに役立つ。創造的思考は従来のアプローチに疑問を投げかけ、新しいアイデアとイノベーションを促進する。さらに、既存のコンセプトまたはアイデアを組み合わせて、変更し、再利用することもある。

.3 有効性の評価基準

  • 有効的な創造的思考の評価基準:
    ・新しいアイデアを生成し、生産的に考えている
    ・新しいコンセプトとアイデアを調査している、あるいは
    ・既存のコンセプトとアイデアへの変革を調査している
    ・自己と他の人のための創造性を育成している、
    ・既存の問題を解決するため、新しいアイデアを適用している

【解説】
目的に「他の人が創造的思考を適用することを支援できれば....」、すなわちビジネスアナリストはステークホルダーが創造的思考を適用することを支援するのです。

定義もご覧ください。「...質問することにより他の人の中の創造的思考を促進することに役立つ。」やはりステークホルダーのために役に立つためにこのスキルを使います。ビジネスアナリストはステークホルダーの創造的思考を促進することが重要です。自分だけが創造的思考ができるだけでは不十分という事のようです。

 

9.1.2 意思決定

.1 目的

  • 効果的な意思決定は、ビジネスアナリストが意思決定プロセスの中で使用する判断基準を定義し、最良の選択肢への意思決定の過程でステークホルダーを支援することを可能にする。

.2 定義

  • ビジネスアナリストあるいはステークホルダーグループが一連の代替案から一つの選択肢を選ばなければならない場合、ステイクホルダーとエンタープライズのためにどの選択肢が最適なのかを決定する必要がある。決定分析は関連情報を分析して、類似のものや異なる代替案間の比較とトレードオフを可能にし、最も望ましい選択肢を特定して決定に適切な情報を集めることである。ビジネスアナリストは決定と、決定を支援する論理的根拠を文書化する。それは将来同様の決定が必要になった場合の参照案として使用されるため、あるいはその状況においてなぜその決定が下されたのか説明する必要が生じた場合のためである。

.3 有効性の評価基準

  • 効果的な意思決定の評価基準:
    ・適切なステークホルダーが意思決定プロセスに代表が参加し、
    ・ステークホルダーが、意思決定プロセスとその決定の論理的根拠を理解し、
    ・利用可能な選択肢のメリット・デメリットがすべてのステークホルダーに明瞭に伝えられ、
    ・その決定は不確実性を縮小するか除去し、また、残るいかなる不確実性は受容され、
    ・その決定は目前のニーズまたは機会に対応し、すべてのステークホルダーに最大の利益をもたらし、
    ・ステークホルダーは意思決定の行われる全ての条件、環境、対策を理解し、そして
    ・意思決定が下される。

【解説】
意思決定するのはステークホルダーです。「目的」にある通り、ビジネスアナリストは「意思決定の過程でステークホルダーを支援する」のです。有効性の判断基準の最後の2行「ステークホルダーは意思決定の行われる全ての条件、環境、対策を理解し、そして決定が下される」のです。ビジネスアナリストはステークホルダーが正しく意思決定ができるように支援するのが仕事という事です。