【BABOK(R) よもやま話】(2) ビジネス・モデル・キャンバス

【BABOK(R)よもやま話】(その2): ビジネス・モデル・キャンバス

V2の知識エリア「エンタープライズアナリシス」が「戦略アナリシス」と名称を変えたことはご存知だと思います。それのみならず、内容も大きく変貌しています。その変貌ぶりは別の解説に譲って、本日はテクニックとして紹介されているビジネス・モデル・キャンバスを見ていきます。

知識エリア「戦略アナリシス」に関しては次のURLのWebページの解説を参照してください。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/052600133/052600003/

 

BABOK-V3_BMC

 

ビジネスモデルを俯瞰的にビジュアルにたった1枚の用紙で表現できる優れたものです。

このキャンバスを作成するための代表的な順番があります。重要なことは顧客重視の立場で書くことです。まずは用紙の右側の部分です。

 

 

 

①  顧客セグメント:

  • 狙いとする顧客は誰でしょうか(そのセグメント)そして顧客の問題やニーズを書きます。必ず一つ以上の顧客セグメントがあります。

②  価値提案:

  • そのニーズを満たし、問題を解決するために、提案できる価値は何でしょうか。価値を提供するための製品・サービス(ソリューション)も書きましょう。

③  チャネル:

  • 価値提案を顧客に届けるためにどんなチャネル(流通、販売などの経路)が必要でしょうか。

④  顧客との関係:

  • 顧客セグメントごとに顧客との関係が構築されます。対面販売とか、Eコマースが相当します。

⑤  収益の流れ:

  • 顧客に価値が届けられると顧客はお金を払ってくれます。そして収益が発生します。その流れと金額(年間売上)を書きます。

⑥  リソース:

  • 上記の要素を提供するためにどんな資源が必要でしょうか。

⑦  主要活動:

  • どんな活動が必要ですか(製造、マーケティング...)

⑧  パートナー:

  • 社外から調達されるものやアウトソース先など。

⑨  コスト構造:

  • 価値を提供するために要するコストはどんなものがあるでしょうか。その金額も書きましょう。そして最後に「収益」と「コスト」を比較し、ビジネスとして成立することを確認します。

キャンバスを書くためにはポストイットを使うことをお勧めします。チームで作成する場合には極めて便利です。

WIN_20150521_204444

 

写真はIIBA日本支部でBABOKガイドv3のビジネス・モデル・キャンバス(特にカスタマセグメントと価値提案にフォーカスしたもの)をポストイットを使用しながら作成しているところです。詳細よりも全体像を一目で把握できるのが特徴です。

 

 

「BABOK(R)よもやま話」としてはここからが本番です。

先週のメルマガではBABOKガイドv3の6つのコア・コンセプトの解説をしましたので、思い出してください。

下記URLのWebページを参照してください。

http://kbmanagement.biz/?p=2897

それでは、ビジネス・モデル・キャンバスの9つの要素とコア・コンセプトとの関係を考えてみます。少し手荒いかもしれませんが、ビジネス・モデル・キャンバスの9つの要素に対応するビジネスアナリシス・コア・コンセプトを右側に記載します。

ビジネスモデル・キャンバス 対応するコア・コンセプト
1 CS:顧客セグメント ステークホルダー(顧客)とそのニーズ
2 VP:価値提案 価値、ソリューション
3 CH:チャネル ステークホルダー
4 CR:顧客との関係 ステークホルダー、
5 R$:収益の流れ 価値
6 KR:リソース ソリューション
7 KA:主活動 ソリューション
8 KP:パートナー ステークホルダー
9 C$:コスト構造 (価値)

 

また、キャンバス上にコア・コンセプトを上書きすると次のようなイメージです。

BABOK-V3_BMキャンバス_2016年1月25日

一方、6つのコア・コンセプトすべてが対応しているわけでもないことに気づきます。

特に次の2つのコア・コンセプトはビジネス・モデル・キャンバスには表現できないことが分かります。

-チェンジ

-コンテキスト

それはなぜでしょうか。

 

 

まず、キャンバスはビジネスモデルの静的な側面、すなわちスナップショットなので変革(チェンジ)の過程は何も表現できません。キャンバスもモデルの一つですから、ビジネス全体像を表すには複数のモデルが必要(例えば3次元の物体を単一の2次元モデル(平面図)だけでは表現できなく、立面図など別の角度の視点でのモデルが必要)、というのと同じことではないでしょうか。

また、コンテキストはビジネス・モデル・キャンバスの外側の環境や制約を含めた全体像を意味します。ですからキャンバスの中には現れてきません。これも立場(モデルの視点)の違いによるものと言えます。

上記2点はビジネス・モデル・キャンバスの弱点をビジネスアナリシス・コア・コンセプトが補完していることになり、2つは非常に相性のよいモデルの関係になっていると思います。言いかたを変えると、ビジネス・モデル・キャンバスで新しいビジネス・モデルを作成するだけではビジネス戦略を遂行することができません。新しい戦略を遂行するためにはBABOK(R)ガイドv3のコア・コンセプトが必要になります。BABOKv3には戦略を実行するのに必要なタスクやテクニックが満載されている、ということになります。