どこでもビジネスアナリシス (63)

63考える能力を育てる

63.1 答を教えても能力は育たない

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人材の育成は組織運営において最も重要な活動の一つです。人材育成には時間がかかりますが、能力を身に着けた人は後に多くのフィードバックをもたらしてくれます。ビジネスの場面は多様であって、発生する課題はそれぞれにおいて異なります。外見上同じであってもその背景や環境が異なれば解決の方策は全く異なることは珍しくありません。

人は考えることによって自ら能力を育て成長します。課題が発生した時にその解決方法を教えて指導することが一般的に行われますが、これでは自分で考えて問題を解決する能力は育ちません。どう処理するかを考えることが能力育成の出発点です。可能な限りどう解決するかを自分で悩み、周りの人々と一緒に考えることが次の成長をもたらします。緊急時などに指示を与える場合には、なぜそうするのかの説明を付け加えれば次の判断材料になります。一緒に考えることによって、さらに良い解決方法が見つかるものです。

63.2 どうやって考えるかが大切

問題に直面した時にその解決方法をどうやって導き出すかは大きな課題です。その時の状況によりますが、問題の規模、特徴、関係先、複雑さなどの想定が直感的にわかることが多いのですが、拙速な判断は禁物です。想定ができた場合にはその検証をすることが欠かせません。まず大切なことは正しい現状認識です。現状認識は起こっている現象、その背景、現象に至った経緯、関係する人や組織、外部環境の状態などをできるだけ詳細にとらえます。問題発生前に兆候となる他の現象が起こっていれば大きな参考になりますし、いろいろな関連情報の時間変化がわかれば重要な参考事項になります。このような現状認識は基本中の基本であり問題解決の第一歩です。現状認識ができたならば、なぜ事象が発生したかの追跡分析に移ります。追跡も想定される種々な要因に分類して不具合発生の要素となった可能性の判断をしていきます。この過程では、判明したことと解らないこととを明確にすることが重要です。これらの検討過程では、発生経過や因果関係が明確になるように図式化することが理解を容易にするとともに、要因の見落としを防ぐことにも役立ちます。業績の変化要因を検討する場合には関連経営指標の相関関係を調べたりするなどの分析作業が必要です。これらの作業によって本当の原因が判明したならば、問題の解決方法の策定になりますが、その前に解決目標の設定が必要です。

63.3 分析や解決のシナリオを考える

現状認識や分析作業は多様な対象項目があり、その選択の判断は作業効率や成果にも影響を与えます。限られた視点や先入観からの検討や分析を避けるためには異なる視点からの総合的な議論が望まれます。実務では直接詳細に入るのではなく、まず全体の検討シナリオを描くことが効果的であり、それに従って詳細の検討を進めます。シナリオには途中結果により選択できる分岐を設定しておくことは有効です。想定通りには進まず思わぬ途中結果になり、シナリオを組みなおす場合もあり柔軟性が求められます。これら一連のシナリオの作成においても、基本シナリオ、途中分岐、現場での変更、など全体を想定した柔軟な考える能力が求められます。 

63.4 失敗は考えるための大切なノウハウ

計画の中に失敗は常に存在し計画通り進むことの方が少ないとも言えます。その原因は、理解の誤り、判断の誤り、時間経過による変化、能力不足、などさまざまですが、それらは実績としての貴重な経験であって、今後活用できる大切なノウハウです。失敗経験の蓄積は重要な考える能力の基盤になります。