第4回 ビジネスモデル・キャンバス(現状)
既にご存知の方も多いと思いますので、簡単に解説します。
[図のクリックで拡大表示] BABOKガイドより、
ビジネスモデル・キャンバス:
エンタープライズが顧客を満足させるための価値提案、その価値を提供する際の重要な要因、その結果生じるコストと売上げの流れなどの理解を可能にする。あらゆるチェンジのコンテキストを把握し、最も重大な影響を与える可能性のある問題および機会を特定するのに役に立ちます。
ビジネスモデル・キャンバスには合計9つのセルと呼ばれる次のパーツがあります。
- 顧客セグメント
- 価値提案
- チャネル
- 顧客との関係
- 収益の流れ
- リソース
- 主要活動
- パートナー
- コスト構造
これからおのおのについて簡単に解説します。
① 顧客セグメント:
狙いとする顧客は誰でしょうか(そのセグメント)そして顧客の問題やニーズを書きます。必ず一つ以上の顧客セグメントがあります。
② 価値提案:
そのニーズを満たし、問題を解決するために、提案できる価値は何でしょうか。価値を提供するための製品・サービス(ソリューション)も書きましょう。
① と②が最も重要です。ここがしっかり対応付けられていないと顧客は相手にしてくれません。顧客は自分に役にたつ(価値を感じるもの)のみに関心・興味を持ちます。
これら2つを実現するために必要なものが次の2つです。
③ チャネル:
価値提案を顧客に届けるためにどんなチャネル(流通、販売などの経路)が必要でしょうか。
④ 顧客との関係:
顧客セグメントごとに顧客との関係が構築されます。対面販売とか、Eコマースが相当します。
① から④の結果顧客は購入することになりますからビジネスとして具体的な収益が発生します。
⑤ 収益の流れ:
顧客に価値が届けられると顧客はお金を払ってくれます。そして収益が発生します。その流れと金額(年間売上)を書きます。
ここまでが前半です。一言で言うと収入とその根拠を明確にするということです。後半では、価値を提供するためには何が必要で、どうしたらよいのかを明確にしていきます。
⑥ リソース:
上記の要素を提供するためにどんな資源が必要でしょうか。
⑦ 主要活動:
どんな活動が必要ですか(製造、マーケティング...)
現状のビジネスでは自社だけで閉じた活動ではすみませんよね。何らかの協力者(パートナー)が必要です。
⑧ パートナー:
社外から調達されるものやアウトソース先などを書きます。
⑥から⑧で価値を提供するための費用(コスト)が分かってきます。
⑨ コスト構造:
価値を提供するために要するコストはどんなものがあるでしょうか。その金額も書きましょう。そして最後に「収益」と「コスト」を比較し、ビジネスとして成立することを確認します。
具体例を示します。医療保険の例です。
[図のクリックで拡大表示]
① 顧客セグメント:
医療保険の契約者や被保険者です。
すなわち、私たち自身かもしれません。
② 価値提案:
私たちは安心した生活を求めています。そのためには
- わかりやすい医療保険提案
- 充実した保障
- 素早い支払い
- さらに収入保障もしてほしいですね。
③ チャネル:
医療保険は代理店や営業支社を通じて契約します。最近はオンラインでWebサイトからできるものもありますね。TVコマーシャルも重要ですね
④ 顧客との関係:
保険を契約するときは対面で直接説明してもらいたいですね。何か病気になって給付金を払ってもらうときは対面でなく電話でしっかり対応してくれれば良いかもしれません。また、診断書が必要になる場合もあります。
⑤ 収益の流れ:
保険会社の収入の基本は契約者からの保険料です。そして通常保険の給付金を支払うまでにはかなりの歳月(数年~)がありますので、溜まっている保険料を運用することができますからその差益も収益として考えられます。
⑥ リソース:
後半としては、まずリソースですが、基本的に人的リソースが主なものです。営業社員、保険査定人(大勢必要です)、また商品企画の人員も多いです。その他一般社員も大勢います。
⑦ 主要活動:
保険会社ですから、保険料を設定したり、特約を設定したりする活動が多いですね。
⑧ パートナー:
営業の代理店やオペレータ、医療機関も立派なパートナーです。ITシステムが不可欠ですからITベンダーも重要です。
⑨ コスト構造:
被保険者が病気になった場合は給付金を支払わなければいけません。営業の代理店手数料や広告費も大きいです。経費の中でも査定費用が大きいと言われています。現状で保険ビジネスが成立しているので、収益とコストはバランスしているとしましょう。
ビジネスモデル・キャンバスと現状のビジネスモデルを医療保険ビジネスの例で解説してみました。あまり難しくないと思いますのでお分かりになったと思います。
第2回目で取り上げた顧客経験(カスタマージャーニーマップ)と対応してみてください。
[図のクリックで拡大表示]
現状のビジネスモデルでは、上図のように顧客は保険金を請求してから、数週間(例:3週間?)後にやっと保険金がもらえる状態です。これでは顧客満足としてはすこし問題ではないでしょうか。
顧客体験を改善するためにはビジネスモデルをどのように変えたらよいのでしょうか。次回はこのビジネスモデルの将来像を考えてみます。さあ、DXのスタートです。