DX実現に不可欠なビジネスアナリシス (6)

第6回 エンタープライズアーキテクチャ (将来像)

 

EA簡易版_2021年5月25日

[図解のクリックで拡大表示]

さてこれからエンタープライズアーキテクチャ(簡易版:上図)の将来像を考えていきます。

前回作成したビジネスモデルキャンバスを思い出してください。

BMキャンバス(将来2)

 

キャンバス上でチェンジするべきことがピンク色のカードで示されています。その上にグリーンのカードが対応するエンタープライズアーキテクチャの5W1Hを示しています。

これらのピンク色のカードをグリーンのカードで示されているエンタープライズアーキテクチャ上の列にマッピングしていきます。そうするとEA上でどの部分をチェンジする必要があるのかの洞察を得ることができます。次の図(簡易版エンタープライズアーキテクチャ)をご覧ください。

エンタープライズアーキテクチャの将来像

EA将来像_2021年5月25日

すなわち、これらのピンク色のカードを具体化すると将来状態のエンタープライズ・アーキテクチャになります。

ここで注目するべきことは、5W1Hのすべての列にピンク色のカードがおかれていることです。

内部資産(情報資産を含む): What

  • 左から、病院情報、リアルタイム支払いの提携病院
  • 顧客データ、新規で若い人、病気持ちの人

すべてWhat(内部資産(特に情報資産としてのデータです))に関することです。データベースの追加や変更などのチェンジが必要になるという洞察を得ることができます。

組織構造と組織文化: Who/Where

続いて、組織構造と組織文化です。ここも保険査定人が不要になるとか、営業人員の削減などのカードが見受けられます。組織構造や組織文化の変更(チェンジ)の必要性がひしひしと伝わってきます。保険請求の接点(顧客とのタッチポイント)は大幅に減少し、受付業務のみになるという洞察を得ることができます。

能力とプロセス: How/When

その他「能力とプロセス」は大幅に変更されなければいけません

ポリシー: Why

「ポリシー」も大幅に変更しなくてはいけなくなりますね。

そうです、これらのチェンジを同時に実行することがまさにデジタルトランスフォーメーションになるわけです。そのデジタルの部分はDMN(意思決定モデルと表記法)という最新のデジタルテクノロジーが要(かなめ)になります。

DMN(意思決定モデルと表記法)に関する解説です。 こちら

それではここでの顧客経験はどうなるでしょうか、前回の図をもう一度確認してみましょう。

顧客経験のトランスフォーメーション

顧客経験1_2021年2月3日顧客経験2_2021年2月3日

2つの将来状態がありますが、この2つの顧客経験の違いは何でしょうか。

将来状態1

「将来状態1」では、保険給付金を受領するまでの期間が短縮するだけです。従来は受領するのに数週間かかっていたものが、請求とほぼ同時(おそらく1時間程度)に受け取れるのですからこれだけでもインパクトは大きいですね。しかし会計窓口で支払いをしなくてはいけません。入院・手術となると3割自己負担でも数十万円を準備する必要があります。これが準備できない人は入院・手術すら受けられないことになりかねません。初期レベルのデジタルトランスフォーメーションはこのレベルでも良いかもしれませんね。

でも本当に顧客経験をトランスフォーメーションしようとすると「将来状態2」のジャーニーマップになるのではないでしょうか。

患者(被保険者)の立場としては、これだけ給付金支払いの時間が短縮できる(数週間が1時間以内に)のなら、支払いも代行してほしくありませんかね。そうすればお金を準備する必要もありませんからありがたいですよね。

将来2

「将来2」ではさらに会計窓口での支払いまで不要になるというものです。これを実現するためには病院側と提携する必要があります。そのためにはビジネスモデルキャンバスとエンタープライズアーキテクチャともに更なる進化が必要になりますが、顧客経験のトランスフォーメーションの将来像が明確なら、さほど難しいことではありません。

途切れないトランスフォーメーション

このようにデジタルトランスフォーメーションはいくつものレベルがあり、一度だけで達成できるものではありません。また、ビジネスの外部環境(今の日本のコロナ禍がそのよい例です)は一刻一刻と変化しています。その中でリスクを考慮しながらも望ましい将来像に向かってチェンジし続けることが何より重要です。