ビジネスデータアナリティクス (1)
DXが叫ばれて久しいですが、いまだにDXを聞かない日がないくらいすっかりバズワード化し定着しています。そしてDXを行うためにはデータドリブン経営が不可欠とも言われます。ビジネスアナリシスにとってもデータ・アナリティクスは無縁ではありません。毎年ビジネスアナリストに対する要望も強くなってきています。
IIBA本部が毎年実施しているBAサラリー・レポートでもそのことが如実に現れていて、2020年の調査ではなんとBAの38%がビジネスデータアナリティクスに携わっていると回答しています。
また、BAの役割の中でビジネスデータアナリティクスのどの領域が最も重要かという質問には、 データの分析(90%)がトップでついで「結果の解釈と報告」(87%)と続いています。主に北米のデータですが、ビジネスアナリストへの期待がますます高まっていることが分かります。日本でも他人ごとではなくなってくるのではないでしょうか。
一方、日本国内では日本データサイエンティスト協会がデータサイエンティストのスキル区分を次のように提案しいます。
データサイエンティスト協会のスキル区分
- ビジネス力:課題背景を理解したうえでビジネス課題を整理し解決する力
- データサイエンス力:情報処理、人工知能、統計学などの情報科学系の知恵を理解し使う力
- データエンジニアリング力:データサイエンスを意味のある形に使えるようにし実装・運用できるようにする力
日本データサイエンティスト協会 URL:https://www.datascientist.or.jp/
そして、この3つの要素を満たすことがデータサイエンティストにとって重要と謳っています。そして今年(2021年)からデータサイエンティスト(DS)検定(リテラシーレベル)なるものが開始されています。
この様に、データアナリティクスへのニーズは高まる一方です。
IIBAではビジネスアナリシスの特定分野してビジネスデータアナリティクス分野のガイドブックを公表しグローバルな認定資格としてIIBA-BDA資格も開始しています(2020より)。
日本ではIIBA日本支部がBDAガイドブックの日本語化プロジェクトに着手し、間もなく日本語版が出版される予定です。そこでこの日本語化プロジェクトに参加している筆者がIIBAのBDAガイドについて解説しようと思います。
この書籍の中では次のようにプラクティスとテクノロジーのセットとしてビジネスデータアナリティクス を以下のように定義しています。
ビジネスデータアナリティクスにおけるプラクティスを、以下の6個のビジネスデータアナリティクス領域のコンテキストで説明しています。
- 調査課題を特定する。
- データを入手する
- データを分析する
- 結果を解釈し報告する
- ビジネス上の意思決定に影響を与えるために結果を活用する
- ビジネスデータアナリティクスのための組織レベルの戦略をガイドする
これら6個のビジネスデータアナリティクス分野は、データ中心アクティビティのセットを定義し、アナリティクス・イニシアチブを成功させるためのビジネスアナリシスのプラクティスを定義しています(詳細は後述)。
ビジネスデータアナリティクスは、科学的方法であるデータ収集とデータ分析の部分に焦点を当てています。一方、その前後のプロセスはビジネスアナリシスによって情報を得ています。ビジネスデータアナリティクスが、ビジネスアナリシスを必要とするのは、回答するのが重要となる質問の特定にデータ分析が確実に焦点を当てて、そしてデータがビジネス上の重要な状況(問題や機会)を解決するための価値ある洞察を確実に生み出すためです。
上図はいわゆる仮説検証のプロセスです。
重要なのは「問い」です。ビジネスにおける重要課題を「問い」の形で投げ掛けることからスタートし、調査を基に「仮説」を立てて検証していきます。
つぎはビジネスデータアナリティクスの典型的な4つの方法です。
記述的
- データを記述したり要約したりすることで、過去についての洞察を提供します。「何が起こっていたのか」という質問に答えることを目的とします。
- 例:地域別の売上データの集計と要約。
古典的なデータアナリティクスとしてご存じではないでしょうか。
診断的:
- なぜ、その結果が発生したのかを探ります。「なぜ特定の事象が発生したのか」という疑問に答えるために使用されます。
- 例:特定の四半期における売上げの急な落ち込みについての調査。
従来のデータアナリティクスの範囲です。
予測的:
- データの過去の傾向を分析し、将来についての洞察を提供する。「何が起こりそうか」という疑問に答えるために、予測分析を活用する。
- 例:来期に発生しそうな損益の予測
診断敵から発展して、これから起きそうなことを予測してくれます。これからが大きな価値を提供してくれそうです。
処方的:
- さまざまな形態のアナリティクスから得られた知見を利用して、検討中の意思決定の予想される効果と成果を定量化する。「もし私達があることを実行したら、何が起こるだろうか」という質問に答えることを目的としている。
- 例:組織がマーケティング費用を10%増額したとき、総売上はどうなるか。
具体的なアクションを取ることができそうです。
従来は記述的と診断敵がメインだったのですが、最近では予測敵が主流になり、さらに処方的に移行しつつあるようです。
ただ、最新の処方敵はデータサイエンスだけでできるわけではなく最新のAIおよび意思決定モデルを組み合わせたものが必要なようです(この書籍の範囲外かもしれません)。
次回はビジネスアナリシスとビジネスデータアナアリティクスの関係についてより詳細に解説していきます。