どこでもビジネスアナリシス (28)

28 現状を知る-現実の観察と認識

28.1 問題に対する自分たちの状態を知る

ビジネスアナリシスではいろいろな意思決定をしなければなりませんが、その時重要なのは決定判断の根拠となる多様な情報の正しい把握です。まず、自分たちが現在どのような状態にあるかの正しい把握です。何らかの問題解決をしようとしているのですからその問題が発生した原因の主な要因は自分自身にあるはずです。また、発生している状況の正しい状況把握のためにも自分たちの状態を正しく捉えることは欠かせません。絶対値としての状態、他組織との比較における相対的な状態 そして最近の変化の状況の三つの視点から捉えることが基本といえます。 特に直近の変化の状況とその理解が大切です。解決しようとしている問題に関係する視点から、できるだけ多角的に捉えることが正しい判断を支えます。

28.2 環境はどう変化しているのか

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次に、自分たちの環境はどうなっているのかを理解することが必要です。身近な問題の例としては、関係する市場の状況、関連する他社の動向、製品の変化や価格の状態、原材料の動きや価格の変動、大きくは政治や経済環境の現状、国際問題、為替レートの動き、国際商品の価格動向、資源商品の動き、などあらゆる周囲環境の状況を捉え、特に自分の事業との関連で整理し理解することが大切です。ここでも変化の状況推移を捉えることが重要であり、それらが自分の事業にどのような影響を与えているかを理解する必要があります。昨今のビジネスはグローバルに展開され、多くの事象が相互に影響を与えていますので、特定地域の問題や動向を理解する事も不可欠です。特に何か特定な事態が発生した場合には、その動きを注意深く見守る必要があり、自分のビジネスへの波及を読み取らなければなりません。

28.3 自分たちはどう対応しているのか

環境の変化に対して自分たちが適切に対応できていない場合に問題が顕在化しますから、変化に対して自分たちはどのように対応しているかの確認と分析が必要です。 まず、環境の変化に対して自分たちはタイミングよく反応しただろうか、その反応は妥当であったのか、計画通りの行動が実行されただろうか、実行された対応の結果は分析され、さらに必要な修正行動は実行されたのだろうか、などいろいろな側面からの確認が必要です。また、自分たちの対応に反応して、再度外部からのリアクションや攻撃を受ける場合があり、そのような場合には再度どのように反応するかの判断には戦略的意思決定が必要になります。このような対応においては終わりのない競争にならないようにしなければなりません。

28.4 自分たちに実行能力があるのか

現状を認識し、その現実に対応する行動において、自分たちは実態に対応する能力があるのだろうかという判断が非常に大切です。論理的にこうすれば成功すると言う手段はいろいろと考えることができますが、自分たちがそれを実行できるかどうかは別の問題です。実行の能力があるかどうかは、実行のノウハウや技術があるかどうか、実行に必要な資源があるかどうか、実行の意識と行動力があるかどうかという三つの側面があります。技術面の問題は外部から支援を求めることも可能であり、必要な資源の投入は意思決定によるところが大きいと言えますが、実行の意識と行動は実行に対する必要性の認識と実行の熱意の有無という最も基本的な自分たちの意志に基づく判断です。むしろ実行の意識があれば他の問題を解決する道は自ずと見つかると言えます。特に実行組織全体の結束と協力的行動ができるのかどうかが、全体を推進する実行能力であると言えます。

 

BABOKガイド V3の 知識エリア「ストラテジーアナリシス」 との関係

本日のテーマは今連載で解説しているBABOK V3 の知識エリア「ストラテジーアナリシス」の基本的考え方です。

具体的には「現状の状態を分析する」タスクと「変革ストラテジーを定義する」タスクの内容を少し詳しく表現したものです。

6.1 タスク: 現在の状態を分析する:

  • ビジネスニーズ、およびエンタープライズが現在、ビジネスニーズに関してどう機能するかを理解する。変革のためにベースラインとコンテキストをセットする。

 6.4 タスク: 変革ストラテジーを定義する:

  • 現在と将来の状態の間のギャップを分析し、将来の状態の達成に対する選択肢をアセスメントして、途中で必要かもしれないあらゆる移行状態を含む将来の状態に達することのできるベストなアプローチを推奨する。

 

詳しくは 知識エリア:【ストラテジーアナリシス】 の解説をご覧ください。