46 全体が見えるようにするにする
46.1 全体の関係を絵にする
ビジネスの現状分析や計画構築の場面において、いろいろな議論が飛び交いますが、議論の構成や相互の理解を深めるには全体の論理関係を絵にすることは理解を容易にすると同時に誤解を避けるためにも非常に有効です。論理を頭の中で理解するより、目に見える形で表現しますと人間の理解を助けると同時に思考を容易にします。絵の描き方は、議論の目的により異なりますが、問題解決の時には因果関係を図示し、実行計画では論理構造とプロセスを、戦略立案では実行策と予想効果を、システム開発では論理構成図を描くなどそれぞれ適切な表現を選択することができます。始めに全体の概念図を描き、議論の進捗に伴い詳細な絵にしていくことも効果的ですが、議論に関する多くの構成要素をランダムに描き、それらを構造化して組み立てていく方法もあります。不足があれば追加してゆきます。絵を描く上で重要なのは、構成する個別の要素を明確にすることと、それらの位置づけ、あるいは他要素との相互の位置関係を明確にすることです。
46.2 視覚に訴える-絵は思考を助ける
視覚に訴えることにより、絵はいろいろなことを語ってくれます。例えば、戦略や方針の全体を絵にして見ますと、考えている理論の全体構造が明確になるだけでなく、思いがけない論理的誤りが見つかることがあります。議事録を絵にして見ますと、議論のすれ違いや不足部分を指摘することにも役立ちます。論理の構造を頭の中に物理的イメージとして描くことができるので、理解が容易になり思考を助けることができます。議論の途中で関係を絵にして説明するならば、相互の意見の相違点を明確にし、理解を容易にして誤解を避けることができます。 但し、絵は概念や関係を示すことは得意ですが、複雑な論理的詳細を表すことに適さないことがあります。そのような場合には、絵と言葉の組合せにより曖昧さを避けなければなりません。
46.3 視点を変えて異なる絵を描くと違うものが見えてくる
絵といってもいろいろな表現があります。論理図、流れ図、構造図、関係図、組織図、多様なグラフも総て絵です。それらの組合せもあります。作図方法が明確に決められた論理図、設計図、結線図、プロセス図、など多様です。ビジネスで効果的に利用できるのは、あまり厳密な図よりも、概念図に近いレベルのものです。概念の伝達と相互の理解のため、あるいは確認や、発見のために用います。現在の状態を絵にする、分析結果を絵にする、戦略を絵にする、などです。いろんな視点から異なった絵にすることでいろんなものが見えてきます。絵にしないと見えにくいものが見えてきます。形、色、記号、線種などを適切に使うことにより表現と理解が倍加します。
46.4 同時に見えると判断が容易にできる
2枚の絵を見比べるより、一枚の絵の中に同時に複数の情報が表示されていれば状況理解が容易であることを良く経験します。 特に、複数の変数を一つのグラフに纏めて表示することにより関係が明確になります。変数軸を適切に選ぶことにより、見えなかった関係が見えるようになります。また、絵の中に適切な説明を加えることにより理解を助け、誤解を避けることが可能となります。多数の要素が複雑に関係する現在のビジネスでは複数の現象を同時に考えなければなりません。一枚の絵にすると言っても複数の情報をただ同時に描くのではなく、相互の関連を表示しなければ効果は少ないと言えます。良い表示方法は、目的とする事象の因果関係の論理仮説を設定し、それを検証する表現方法を考えることが必要です。 2次元である一枚の紙の上に、軸の選択、記号、形、色、線種、などを組み合わせますと4~5次元の情報を同時に表示することも可能です。
解説:
今回の「どこでもビジネスアナリシス」で取りあげている議論は、BABOK(R)ガイド バージョン3では「基礎コンピテンシ」の新しいコンピテンシ「ビジュアル思考」に相当します。
「ビジュアル思考」の解説ページを参考にしてください。
http://kbmanagement.biz/?p=2451